抄録
青森県岩木川左岸地区の農業用水路網において,ヤリタナゴの産卵生態と季節的な移動に関する調査を行った.調査地のヤリタナゴは,主な産卵母貝としてヨコハマシジラガイ,マツカサガイを利用していた.また,採捕個体数,体長組成および標識再捕結果から,調査地では支線水路である砂沢地区を産卵場および仔・稚魚の生育場として利用し,成長した個体が幹線用水路である土淵堰用水路に分散して生活している可能性が示唆された.このような生活史は,選好される産卵母貝の分布が一部の水路に限られていたこと,支線水路が仔・稚魚の成育場として良好な環境であったためと考えられた.