農業水路に魚類の越冬のための深みを造成し,深み造成前後で物理環境条件および魚類相を比較した.調査を行った3地点のうち1地点は2008年から深みが存在していた.残る2地点のうち1地点には堰上げにより30cmの深みを1か所,他の1地点には掘削により水深60cmの深みを2か所新設し,後者では一方を「カバー有」,もう一方を「カバー無」とした.また,採捕個体には調査の時期と深みによって異なる標識を付け,越冬個体の移動について調査した.その結果,越冬期である12月および越冬後の3月には,深みを造成した地点では深み造成後に種数,生息密度,多様度指数の増加が見られた.また,「カバー無」と比べて「カバー有」の深みで生息密度が高くなり,標識個体のうち深み間を移動したものは全て「カバー無」から「カバー有」の深みへの移動であり,魚類の越冬に対してカバーが有効と考えられた.