抄録
谷池型ため池群流域である広島県椋梨川上流域において,貯水位観測と洪水流出モデルの作成を行い,対象流域におけるため池群の洪水緩和効果を評価するとともに強化策を考察した.6月上旬と9月上旬の貯水位観測の結果から洪水期間中のため池群は少雨年を除いて満水に近い状態にあること,中央集中型降雨と後方集中型降雨を用いたシミュレーションの結果から後方集中型降雨に対する場合と中央集中型降雨においても空き容量が小さい場合には下流河川の基準点に対して発揮される洪水緩和効果は小さいことを示した.対象流域におけるため池群の活用による下流域への洪水緩和効果の発揮にあたっては,ため池への洪水調節容量の付与が必要である.