抄録
モンゴル国東部ドルノド県を対象にして,五種畜(駱駝,馬,牛,羊,山羊)の斃死と気象要因の関係を分析した.まず,五種畜の頭数は主に社会・経済的要因によって長期的に変動し,斃死率は気象要因の影響を強く受けて短期的に変動している.さらに,各月の気象要因と斃死率の単回帰分析から,駱駝と馬の斃死率は冬季の気象要因による影響よりも夏季の気象要因の影響を強く受け,とくに,駱駝は夏季の低温多雨に,馬は夏季の低温によって斃死率が高くなることを明らかにした.一方,牛,羊,山羊は冬春季の気象要因の影響を受け,多雪になると斃死率が高くなり,また4月の融雪開始時期や10月の積雪開始時期に降水量が少ないと斃死率が高くなる傾向があった.この他,馬と羊と山羊は4月の低気温の影響を受け,暴風雪や砂嵐の起こりやすいこの時期に斃死率が高くなることを明らかにした.