傾斜地水田域の排水路床の粗粒化は, 生物の生息環境を悪化させる原因の1つである.本研究では, 砂州創出機能を持つ切り欠き付き水制を排水路床に設置することで, 砂州表層の粗粒化が抑制されるかどうかを検討するために室内実験を行った.その結果, 水制を設置しても, 細砂の砂州表層下への沈み込みなどによって, 砂州表層の粗粒化は直接的には抑制されないことが明らかになった.しかし, 現地排水路では砂州表層の粗粒化抑制が確認されている.これは, 傾斜地水田域では比較的顕著な排水路床の撹乱作用に, 水制設置による淀みの形成作用が加わることによって, イネ科植生が砂州に定着可能となり, 細砂を捕捉することによるものと推察した.すなわち, 水制の設置は間接的であるが砂州表層の粗粒化を抑制すると判断された.