2014 年 82 巻 6 号 p. 383-393
近代的な設計・施工が行われていないため池の堤体は, しばしば強震動を受けてすべりや亀裂が発生する.その主因は, 地震時に堤体内の飽和部分で間隙水圧が上昇して非排水せん断強度が大幅に低下することである.この現象を解明するため, 異なる乾燥密度の飽和供試体の非排水繰返し載荷を行うとともに, その直後に非排水単調載荷を行った.乾燥密度が低い場合, 負のダイレタンシーによって繰返し載荷を伴わない非排水せん断強度(初期値)が低下するとともに, 非排水繰返し載荷で生じるひずみが増大して初期値に対する非排水せん断強度の低下率が大きくなる.締固めは, 非排水せん断強度の増加と維持に対する効果が大きくため池の耐震性向上に極めて有効である.排水せん断強度に対する締固めの影響は小さく, 排水せん断強度に基づくと飽和盛土の地震時の安定性に対する締固めの影響を過小評価する.