棚田・段畑の景観をその地域ならではのものとして特徴付けている法面には, 土羽と石積みの種別があるが, それぞれの法面は, 地域によって成り立ちが異なっている.これらの成り立ちを知ることは, 地域景観の保全において有効な情報となり, 圃場整備事業などへの活用が期待される.本研究では表層地質と法面の種別の関連性を定量的に示すことを目的とし, 全国464地区の棚田・段畑地区を対象に, 岩石区分, 地質時代区分から分析を行った.その結果, 火成岩では石積みが卓越するものの, 火山岩類では新生代第四期の後期更新世より新しい岩石では100%土羽となり, 深成岩類では風化しやすい珪長質深成岩類で27%が土羽の地区となることが分かった.堆積岩類では, 年代によってほぼ明確に土羽と石積みが分かれ, 新生代古第三紀より新しい地質で90%が土羽, 新生代古第三紀より古い岩石で97%が石積みとなった.また, 付加コンプレックス, 変成岩類ではほぼ石積みとなる.