土壌凍結層融解時の土中水の再分布は,春先の農地の水分管理や河川の水質に影響を与える.しかし,凍土の融解については観察例が少なく,水分移動の理解や数値モデルの検討が遅れている.そこで,表層に凍結層を持つ土カラムの融解過程の温度・水分分布を詳細に観察し,その数値解析を既存の凍結モデルで試みた.結果,融解初期に地表から凍結層に流入した水はその場では凍結せず,ある程度流下した後に再凍結すること,融解中期までは下層の未凍土から凍結層への上向きの水分移動が継続すること,凍結層全層が0°C近傍になると凍結層内を融解水が流下することが明らかになった.また,既存の凍結モデルでは凍結と融解が系内で同時に生じ,水分移動量も大きくなりがちな融解過程の表現が難しいことが示された.今後の課題として水の再凍結遅延のモデル化と凍土の透水係数モデルの改良が考えられた.