抄録
既設ダムの耐震性能照査の一環として実施される地震応答解析において,基礎岩盤の設定範囲および材料物性がダム堤体の応答特性に与える影響を検証した.その結果,堤体の加速度増幅率,加速度フーリエスペクトル比(天端/堤敷),一次卓越周波数は基礎岩盤の材料物性による影響を顕著に受けることが分かった.また,基礎岩盤の材料物性が同一であれば,堤体の一次卓越周波数は基礎岩盤の設定領域の影響を受けず,ほぼ同様の値となった.そのメカニズムは,堤体と基礎岩盤の相互作用に基づく堤体の振動性状に起因し,堤体の変形モードが基礎岩盤の設定範囲ではなく材料物性による影響を顕著に受けるためだと考えられる.また,基礎岩盤の応答特性は堤体の卓越周波数の影響を受けることから,モデル化領域の設定にあたっては,堤体と基礎岩盤の一次卓越周波数が近接しないよう設定することが重要である.