2021 年 89 巻 1 号 p. I_29-I_35
遡上阻害が発生している水路の急傾斜区間を対象として,水生動物の生息場ネットワークを分断する高速流発生箇所の流況を,低コストかつ速やかに改善するための可搬魚道システムを提案した.魚道内流況を調整するためのブロックを,ブロック設置後に堰上げられる区間の長さ(魚道設置角7°,魚道内流量4.3L/sの条件では25cm)に合わせて千鳥配置することで,魚道設置前の5倍以上の水深を確保した上で,6割水深での測定流速と魚道設置前の流速の比ν0.6H/ν0が1を下回る流況を創出できた.特にブロックの下流側では,測定流速がν0の2割程度の値まで低減されており,現場にて魚道を利用する魚類の休憩箇所として機能すると考えられた.現地実験にて体長3.4cm以下の魚類が遡上し,提案魚道システムにより短時間で構築された遡上環境を,小型魚類が移動に用いることを確認できた.