農業農村工学会論文集
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研究論文
積雪寒冷地の礫質褐色森林土のリンゴ園における土壌環境の周年変化
―フィールドモニタリングシステムを用いた樹園地の土壌水分・EC・地温の各種環境形成過程の把握―
遠藤 明
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2021 年 89 巻 2 号 p. I_243-I_250

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抄録

青森県津軽地域は積雪寒冷地にあり, リンゴの一大産地として知られている.本研究は, 当地域の礫質褐色森林土におけるリンゴ園土壌中の物質・エネルギー輸送現象を理解することを目的に, フィールドモニタリングシステム(FMS)を適用することで, 2016~2020年の土壌水分・電気伝導度・地温の周年変化の特徴を把握した.土壌水分の特徴に着目すると, 2016~2019年の観測期間中において, 土壌水分減少量の積算値(ΣΔTSM)に増加傾向が認められ, 当リンゴ園土壌が乾燥過程にあったことが示された.土壌溶液の電気伝導度は, 測定の適用限界である体積含水率が0.1 cm3/cm3を下回ったことを受けて, マトリックポテンシャルが-4,000 cmH2O(pF 3.6に相当)に至ると, 時間経過に伴って見かけ上の急増が認められた.また, 春先の施肥の影響は電気伝導度の観測結果には現れにくかった.地温の特徴については, 積雪期間中に積雪が断熱の役割を果たすことで, 非積雪期間の地温変化と比較して変動が小さく, また, 融雪期終盤では融雪水の降下浸透を受けて10~100 cm深の地温が短期間で低下し, 深部ほど地温低下が著しくなることがわかった.

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© 2021 公益社団法人 農業農村工学会
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