ICT自動給水栓の導入を決めた農家の期待と不安について,質的研究の手法であるSCATを用いて分析した.ICT自動給水栓への期待としては,①水管理の在宅での遠隔操作,②データの可視化による水管理の操作ミスの削減,③全圃場での最適な時間での水管理の実現,④水管理作業の省力化,⑤水管理に要する人件費の削減,があることが明らかとなった.不安としては,①輪番灌漑の継続的な実施の必要性,②ICT自動給水栓の盗難・破損・故障,③データ送信の不具合,④ICT自動給水栓やスマートフォンの作動不良,⑤ICT自動給水栓の着脱の困難性,⑥代かきや間断灌漑といった複雑な水管理への不適応,が明らかとなった.また,ICT自動給水栓を導入しても,農家は稲の生育状況の確認のための田廻りの必要性を感じていることも明らかとなった.さらに,これらに対する検討課題についても考察した.