2022 年 90 巻 1 号 p. II_77-II_83
大雨時に農業用水源となる河川で発生する放射性セシウムの流出を検知する手法として,防水容器に封入したNaI(Tl)シンチレーション検出器を用いた測定システムを構築し,現地観測した.その結果,河川水位上昇時にはバックグラウンドの遮蔽効果によるピーク計数率の低下が,まとまった降水後には濁水中の放射性セシウムによるとみられるピーク計数率の上昇が観察された.また,解析で得られた放射性セシウムの2つのピークの計数率の比やピークの関心領域と検出器温度の関係が既往の知見と整合的であったことから,本研究での測定が妥当であったと判断された.さらに,平滑化2階微分によるピーク計数率の顕著な変化の検知方法を提案した.この方法はリアルタイム測定に適用可能であり,パラメータ調整や濁度など他の指標を組み込んだ統合的評価によって検知精度の改善と水管理上の有用性の両立が見込まれる.