本研究では,P2O5やZnが不足する黒ボク土に対して,熔リンを施用した場合との比較から,鶏ふん炭の施用がコムギの生育や土壌化学性に及ぼす影響についてポット栽培試験により検討した.熔リンを施用した場合と比較して鶏ふん炭の施用は土壌の可溶性Zn,Cuを有意に増加させた.また,熔リン処理と鶏ふん炭処理の違いによる土壌pHや可給態P2O5への有意な影響は確認されず,P2O5施用量が同量の場合,鶏ふん炭は熔リンと同等のpH中和能やP2O5補給能を有することが示唆された.従って,鶏ふん炭が炭素貯留資材としてだけでなく,P2O5補給資材,微量要素供給資材として有用であることが示された.ただし,鶏ふん炭を多量に施用する場合には,土壌交換性K,Ca,Mgの大幅な増加により,土壌の塩基バランスを損なうリスクに留意する必要があると考えられた.