本研究では集中定数型水循環モデルを構築し,2015年5月に手取川上流域で生じた大規模な斜面崩壊に伴う高濃度濁水が扇状地の地下水位に与えた影響を検討した.濁水発生前の水文データに基づいて地下水位変動を再現するモデルパラメータを同定した後,そのモデルパラメータを用いその後の地下水位変動を計算した.その結果,濁水発生前の2015年4月まで計算地下水位は実測値にほぼ一致するが,濁水発生直後から実測値が計算値に比べて急激に低下し,その後数年間を経て両者の差がほとんど解消されていることを示した.このことは,濁水発生後に水循環モデルには反映されない現象が発生したことを意味し,これまでの研究成果と併せて,実測地下水位の低下は濁水による河川からの伏流および主に水田からの浸透の減少によるものと判断された.