2022 年 90 巻 1 号 p. I_75-I_81
コンクリート構造物で生じる既設コンクリートの炭酸化と表面粗さが,無機系補修材料とのせん断付着強度へ与える影響を室内試験で評価した.その結果,母材コンクリート表面の算術平均粗さの増加に伴ってせん断付着強度が高くなることを確認した.母材コンクリート表面の算術平均粗さとせん断付着強度の関係は,母材コンクリートへ促進中性化作用を与えた場合でもほぼ同一であった.そのため,本研究で採用した試験条件の範囲内では,母材コンクリートの炭酸化がせん断付着強度へ与える影響は,表面粗さによるものと比較して小さいと考えられる.また,JIS R 5201の「強さ試験」に準拠して作製したモルタルを母材として求めたせん断付着強度と比較した結果,このモルタルのように表面が平滑な母材を用いて供試体を作製した場合,安全側のせん断付着強度が得られると考えられた.