農業農村工学会論文集
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研究論文
中山間地域での条件不利地への粗放的管理区域の設定方策
― 農地環境整備事業における保全管理区域の事例研究 ―
土屋 恒久石井 敦
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2024 年 92 巻 2 号 p. I_177-I_186

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抄録

中山間地域の農地は,食料の安定供給や多面的機能発揮の観点から保全が望ましいが,人口減少下のなかすべての保全は困難であり,営農を継続する区域と森林等の粗放的管理を行う区域を区分し,それぞれを保全してゆく方策が求められている.本研究では,粗放的管理区域(保全管理区域)と優良農地区域(生産区域)の設定を実施要件とする農地環境整備事業を対象に,保全管理区域設定の実態と課題を明らかにした.事業実施数の最も多い新潟県で2019年度までに事業を完了した27地区についてアンケート調査を行い,保全管理区域の取得者,管理方法等の実態を換地計画書と現地聞き取り調査によって求めて分析した.結果,保全管理区域は,ほぼすべてが条件不利地に設定されたこと,保全管理区域への換地を新たに望む者がいないことから保全管理区域と生産区域の土地交換が難しいことが明らかになった.また,適切な場所に保全管理区域を設定する手法として,分散する耕作放棄地等を不換地として保全管理区域に集約し,創設換地として地権者全員が共同で取得する方式の有用性を論じた.

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© 2024 公益社団法人 農業農村工学会
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