本研究では,農業用水路における流水熱ヒートポンプシステムの運用技術確立を目的として,栃木県那須塩原市内の農業用水路内にシート状熱交換器を設置し,水路に隣接したイチゴを栽培する温室へ,ヒートポンプを用いて熱供給する実証試験を実施した.農業用水を熱源にしたヒートポンプによる暖房や冷房の試験によって,実際の農業用水路で安定的に熱供給できることが明らかとなった.水温1.7℃の流水を熱源にしてヒートポンプシステムを暖房運転すると,ヒートポンプシステムは停止することなく,ヒートポンプシステム全体のCOP(システムCOP)2.4〜2.5で安定的に熱供給できることが確認された.また,灌漑期の水路の流水を冷熱として冷房に利用できれば,システムCOP 5.4〜6.0で効率的にヒートポンプを稼働できることが示された.