2025 年 93 巻 1 号 p. I_21-I_28
本研究では,滋賀県の全集落営農法人を対象に,水稲生産に関する10種類のスマート農業技術の導入に関するアンケート調査を行った.機械分類ごとに,その技術を採用している法人,採用検討中の法人,不要とする法人について,組織の革新性に相関のある指標を用いてノンパラメトリック検定を行い,その特徴を明らかにした.結果,導入率は44%と,2022年農業法人実態調査結果の導入率(82.3%)と比べて顕著に低かった.また大型主要機械とデータ管理システムは,水稲面積20ha以上の法人で導入される傾向にあった.一方,小型作業機械は面積規模に依存せず採用される傾向があり,今後は小規模な法人でも導入が拡大する可能性が示唆された.また全ての機械分類に共通して,採用検討中の法人の方が,不要とする法人よりも組合員の合意形成の必要度が高かった.合意形成を進めるために,法人内でも頻繁に話し合いの場を設け,技術導入について意見交換の機会を増やすことが方策として考えられる.