農業農村工学会論文集
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研究論文
田面状態がケリの営巣場所の選好性と繁殖に与える影響
小丸 奏伊藤 健吾森部 絢嗣安藤 正規乃田 啓吾
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2025 年 93 巻 1 号 p. I_45-I_52

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抄録

ケリは水田地帯で繁殖をする稲作に依存した繁殖生態を持つが,近年の農事暦の変化(早生化)により,耕起などの営農活動により巣が破壊されるリスクが増大し,繁殖成功率が低下している.したがって,営巣期に耕起を避けることが有効な保全方法であると考えられるが,耕起により創出された視認性が良い田面状態がケリの繁殖にメリットを与えている可能性は否定できない.よって,本研究では,耕起済田面と未耕起田面間で営巣数と繁殖成績を比較することで,田面状態がケリの営巣場所の選好性と繁殖に与える影響を解明することを目的とした.結果,ケリは田面状態に関わらず営巣場所を決めていることが示唆されたが,繁殖失敗に繋がる原因は田面状態によって異なっており,未耕起の田面では敵に捕食されるリスクが高く,営巣開始前に耕起をすることがケリの繁殖に良い影響を与えていることが明らかとなった.

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