農業土木学会論文集
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物理性からみた “構造発達係数” の意義および土壌構造の改善策
粘土質土壌の理工学性と土壌構造に関する研究 (III)
矢沢 正士前田 隆
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1984 年 1984 巻 114 号 p. 69-76,a2

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抄録

粘土質土壌の構造の発達程度を量的に表わすための指標として,筆者らの提案した“構造発達係数”が,土壌の種類によらず統一的な構造指標としての意義を有するかどうかを,物理性との対応の面から検討した。また土壌構造の発達に対して粘土含量や腐植含量などの要因がどのように関連するかを検討するとともに,土壌構造を改善するための対策についても考察した。得られた結果は次のように要約される。
(1)構造発達係数は土壌の種類(非火山性土壌と火山灰土壌)にかかわらず,飽和透水係数やpF3以下の水分量,重力水,有効水といずれも正の有意な相関を示した。
(2)畑地としての物理性の良否の指標値と構造発達係数との関係から,構造発達係数の値が1.5以下の場合には構造の発達が不良,1.5~1.8では普通,1.8以上では良好と判定された。
(3)構造発達係数と構造性間隙量の間には正のほぼ直線的な関係が得られた。
(4)粘土含量と構造性間隙量の間には負の相関が認められたが,とくに非火山性土壌では粘土含量が40%以上になると構造の発達が不良となる傾向を示した。
(5)腐植含量と構造性間隙量の間には正の相関が認められたが,土壌構造の発達に対して腐植が積極的に関与するためには7%以上の腐植含量が必要と判定された。
(6)pF1.8飽和度と構造性間隙量の間には負の相関が認められ,土壌構造の発達に対する乾燥・湿潤の作用の重要性が示された。
(7)構造の発達が不良な土壌には2種類のタイプのあることを示し,排水改良,土層改良,土壌の膨軟化,堆厩肥等の有機質資材の投入などの土壌構造の改善策について議論した。

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© 社団法人 農業農村工学会
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