農業土木学会論文集
Online ISSN : 1884-7234
Print ISSN : 0387-2335
ISSN-L : 0387-2335
段畑裸地への熱収支法の適用結果について
地温分布解析からみた蒸発量の検討
新庄 彬
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 1984 巻 114 号 p. 77-89,a2

詳細
抄録

昭和51年~55年度に行った一連の微気象観測の結果について熱収支法を適用し,潜熱伝達量を求めた。求めた値の信頼性について判断する必要から,潜熱伝達量を地表面の熱収支式(境界条件)に代入し,熱伝導方程式の解と地温の実測値との一致の度合いを調ベた。その際,境界条件を構成する諸項中,とくに顕熱伝達係数と土壌の熱定数を正確に推定することが重要となった。そこで,前者については風速との関係を明らかにしく((15)式),(20)式を用いて後者,すなわち熱定数の最適値を推定することによって境界条件における潜熱項を除く他項の精度を高めた。
かくして,上述のように,潜熱伝達量の推定値の精度を解析解((13)式)と地温の実測値との対応に基づき判断した。得られた結果を以下に要約する。
潜熱伝達量,換言すれば蒸発推定量はとくに表層の土壌水分の多少に影響を受けることが明らかとなった。つまり,表層の土壌水分が十分にあるときには,地上2高度のうちの一方は地表面での気象要素を適用すればそのときの蒸発量を推定可能である(Fig.20)が,表層の土壌水分が十分ではなく,とくに表層が乾燥している場合には地表面での飽和水蒸気圧に補正係数(1未満)を乗ずる等の必要性が考えられた。これら土壌表面の乾湿の度合いが明確な場合についての結果は,従来より研究が行われている,いわゆる混合法に関するPenman法とその修正を提案したMonteithの方法とに符合する点である。
最後に,各年度の熱収支法による蒸発推定値について,その妥当性をまとめれば次のようになる。
昭和51年度:過小評価の傾向。昭和52年度:過大,過小評価の2面性をもつが全体としては妥当。昭和53年度: 昭和52年度同様に,2面性をもつが全体としては妥当。昭和54年度:8月,過小評価。10月,2高度とも大気中にとる場合は過小評価。一方を地表面にとる場合は過大評価。12月,2高度とも大気中にとる場合はほぼ妥当。一方を地表面にとる場合は過大評価が明瞭。昭和55年度:2高度とも大気中にとる場合は過小評価。一方を地表面にとる場合は妥当。

著者関連情報
© 社団法人 農業農村工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top