1992 年 1992 巻 162 号 p. 143-150,a3
これまでに, 蒸発散算定式や蒸発散機構に関する研究が進展する過程で, 蒸発計蒸発量は基準蒸発量としての役割を果たしてきた。近年は, コンピュータ処理に馴染みかつ物理的に明解とされる蒸発散算定法が発展している。本報では, まず, 基準蒸発量算定を目的とした測定基準化へのあゆみと, 蒸発計蒸発量の問題点を整理する。次に, 測定基準と蒸発散算定法の確立のための研究を整理し, 基準蒸発量としての蒸発計の役割はほぼ達成されたと評価する。また, 蒸発計は実測, コスト, 簡便, 気象環境の反映という点で優れているため, 狭い地域や気象観測設備の不十分な地域での蒸発散研究では, 蒸発計蒸発量が重要な役割を果たすことを強調する。