抄録
近年では農業用利水ダム貯水池においても周辺の観光資源化が進み,濁水長期化現象に対しても予測法や対策が求められるようになっている.本研究では,1993年に大規模洪水によってこの現象が発生したダム貯水池を対象に,現象の発生過程の検討,および数値シミュレーションを行った.まず,降雨開始時より流入部で調査を行い,流域で山崩れが発生するような大規模洪水時には,SS流入濃度の変化が中規模以下の洪水時と全く異なることが明らかとなった.その後貯水池内や放流部でも,数カ月間この洪水の影響を追跡調査した.鉛直一次元モデルによる数値シミュレーションでは,水温,SS濃度とも良好な精度で洪水後貯水池が清澄化していく過程を再現できた.これは洪水時のSS流入濃度を実測したことによるところが大きい.