心臓
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心室遅延電位陽性を認める心筋梗塞患者QRS波の時間—周波数分析
高野 奈実堤 健若月 大輔東 祐圭高野 治人岩澤 邦明中島 敏明
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2010 年 42 巻 SUPPL.1 号 p. S1_4-S1_9

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抄録

Late potential(LP)陽性例QRS波の時間-周波数解析を行い, QRS区間内に発生する異常周波数パワー分布を検討した.
急性心筋梗塞患者でCCU退出後LP検査を施行されたLP陽性患者(16名: 真陽性 6例, 偽陽性 10例), LP陰性患者(16名: 真陰性 10例, 偽陰性 6例)を対象とした. 標準12誘導心電図を, フィルター; 300Hz, sampling rate; 10KHzの条件で20秒間記録した. Wavelet変換ソフト(BIOMAS ver 1.0, Elmec 社, 東京)を用いて時間-周波数解析を行った. Wavelet基底関数にはGabor waveletを使用, 心電図の1心拍を選びwavelet解析を行った. QRSの頂点から100msecの区間を選択し, 80列の周波数パワー値のおのおのについて積分, CSVファイル出力して周波数軸に対する積分周波数パワー値分布を求め, グループ別の周波数パワー分布を比較した. 真陽性群(TP)と真陰性群(N)のパワー比は, 低周波領域でTP群のパワーが低く, 200Hz以上の高周波領域ではTP群のパワーが高かった. 加えてTP例の周波数分布には周波数パワー分布の‘不規則性’が認められた. またTP例, 偽陰性(FN)例ともに高周波パワーの局在はQRS区間内に観察され, QRS末尾には意味ある周波数パワーが認められなかった.
以上の結果からLP陽性例の1心拍解析はLPに依存する周波数よりもQRS区間内に出現する異常周波数パワーの測定に適していると推定される. QRS区間内周波数パワー分布の‘不規則性’は, 心臓興奮前面(excitation front)の歪みや進行異常を表わしている可能性があり, VT発生基質の表現を表していることが示唆される.

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© 2010 公益財団法人 日本心臓財団
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