抄録
低フィルダム(ため池)の堤体下の放流管周辺に沿ってしばしば生じている漏水と, それに伴う決壊の原因を, 水理破砕(hydraulic fracturing)の観点から究明するため, 箱形と馬蹄形の暗渠に作用する土圧を実測とFEM解析によって検討し, 暗渠頂部の鉛直土圧はアーチ作用のため, そのかぶりからの予想値より約1.6倍大きくなるが, その側面部の水平土圧は著しく現象し, 貯水位が頂堤部近くに達すれば, 貯水圧よりかなり低くなることを確認した. これらから, 地震, 不同沈下, 乾燥などにより堤体に縦亀裂が生じ, 貯水池の水が, 水頭損失なしに(または, わずかな損失で)暗渠側部に達すれば水理破壊が生じ得ることを示した. またその防止対策も提案した.