抄録
NaCl溶液の浅い地下水面を持つ鳥取砂丘砂を用いたカラム蒸発実験を行い, 土壌中の溶質移動の予測に広く用いられている移流分散方程式(CDE)の, 塩類集積過程への適用の妥当性について検討した. 独立に測定した供試土壌の移動物性値を用いて, 水蒸気移動を含めたRichards式と過剰塩の析出を組込んだCDEを連立させ, 差分法により数値的に水分溶質挙動を予測した. 土壌面付近の計算濃度は実測値に比べ小さく, この過小評価により, 蒸発速度を大きく減少させる結晶の析出開始予測が著しく遅れた. 上方への移流移動に逆らう下方への溶質移動の過大評価は, CDEが物理的分散をフィックの法則のアナロジーで表現することに起因することを示した.