抄録
圃場整備事業の効果発現状況を明らかにするため、統計学的手法を適用した分析を試みた。その結果、以下の三点が明らかになった。第一に、整備により労働生産性は大幅に向上するが、土地生産性はほとんど変化しない。資本生産性の変化方向は経営規模により異なり、小規模層、中規模層では低下、大規模層では横這い、規模拡大指向の強い担い手農家では向上している。第二に、費用対効果分析の結果は、事業地区内に小規模農家の耕作田が残っている状況にもかかわらず、全国平均の内部収益率が4%を超えている。第三に、事業効果のうち営農経費節減効果を高めるためには、規模拡大指向の強い受益者に農地を集積すること、農業機械の過剰投資が生じないような政策誘導を図ること、平坦部の地区や湿田地区を優先して整備すること、パイプライン化を図ることが有効であると、完了地区の実績値から示唆し得る。