帯水層からの地下水揚水量の決定を最適かつ確実に行なうことは, 地下水の枯渇を避ける意味でも重要であるが, 決して容易なことではない. ここでは, この問題を解決する手法として, 非定常地下水流の有限要素モデルと遺伝的アルゴリズムを組み合わせる手法を提案し, この手法を用いて地下水位の低下が問題となっているバングラディッシュ, コミラ地域の漏水性不圧帯水層における乾季の最適地下水揚水量および漏水量の推定を行なった。計算においては揚水量と漏水量の最適値を求めるために, 対象となる地域を6つの小領域に分割した. 得られた結果から対象地域における現在の揚水量は, 小領域によって異なり, その値は31.6mmから131.0mmの鯛をとるが, 髄値では44.8mm~113.1mmとなることが明らかとなった. また, 現状のわずか9.2パーセントの揚水量削減とより効果的な利用パターンを採用することだけで, 揚水ポンプの吸水口以下に地下水面が低下するのを回避できることも明らかとなった. さらに各小領域における6ヶ月間の漏水量は (+) 30.6~(-) 37.6mmの範囲をもち, 揚水量パターンをコントロールするのに重要な意味をもつことも判明した. 同時に, 上層の漏水性不圧帯水層に対する潅漑需要水量は207.2mmと推定されるのに対して, 現状の揚水量は406.6mmとなっていることが明らかとなった. したがって, 上層の帯水層から96.2パーセントもの量が過剰に揚水されていることになり, 深刻な水管理問題が対象地域に存在することを示す結果となった. 結論として, 本手法が問題に対する全体としての最適解を求めるのに非常に効果的かつ効率的であることが明らかとなった.
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