農業土木学会論文集
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1999 巻, 204 号
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  • ファザル M. A., 平松 研, 河地 利彦, 板垣 博
    1999 年 1999 巻 204 号 p. 659-670,a1
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    帯水層からの地下水揚水量の決定を最適かつ確実に行なうことは, 地下水の枯渇を避ける意味でも重要であるが, 決して容易なことではない. ここでは, この問題を解決する手法として, 非定常地下水流の有限要素モデルと遺伝的アルゴリズムを組み合わせる手法を提案し, この手法を用いて地下水位の低下が問題となっているバングラディッシュ, コミラ地域の漏水性不圧帯水層における乾季の最適地下水揚水量および漏水量の推定を行なった。計算においては揚水量と漏水量の最適値を求めるために, 対象となる地域を6つの小領域に分割した. 得られた結果から対象地域における現在の揚水量は, 小領域によって異なり, その値は31.6mmから131.0mmの鯛をとるが, 髄値では44.8mm~113.1mmとなることが明らかとなった. また, 現状のわずか9.2パーセントの揚水量削減とより効果的な利用パターンを採用することだけで, 揚水ポンプの吸水口以下に地下水面が低下するのを回避できることも明らかとなった. さらに各小領域における6ヶ月間の漏水量は (+) 30.6~(-) 37.6mmの範囲をもち, 揚水量パターンをコントロールするのに重要な意味をもつことも判明した. 同時に, 上層の漏水性不圧帯水層に対する潅漑需要水量は207.2mmと推定されるのに対して, 現状の揚水量は406.6mmとなっていることが明らかとなった. したがって, 上層の帯水層から96.2パーセントもの量が過剰に揚水されていることになり, 深刻な水管理問題が対象地域に存在することを示す結果となった. 結論として, 本手法が問題に対する全体としての最適解を求めるのに非常に効果的かつ効率的であることが明らかとなった.
  • 塩野 隆弘, 高木 東, 小倉 力, 上村 健一郎
    1999 年 1999 巻 204 号 p. 671-678,a1
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    クロボク土を用いて畝立てしたキャベツ畑の畝部の模型を作成し, キャベツを植えた模型と裸地の模型に人工降雨を同時に与えて畝部からの土壌侵食量を測定した. 実験の観察から, 畝部で発生した土壌侵食は雨滴が直接土壌表面に衝突することによって生じる雨滴侵食であると推察した. 裸地の模型における畝部の土壌侵食レートは, 降雨強度のおよそ二乗に比例し, また畝の横断勾配に比例して増加した. 実験での畝部の土壌侵食量はキャベツの成長とともに減少し, キャベツの植生が畝部の土壌侵食レートに与える影響は植被率の一次関数として表現できた. さらに, 野外試験区における観測結果から, この関係式の自然降雨での有効性が示唆された.
  • ハイブリット式魚道に関する研究 (I)
    泉 完, 工藤 明, 相場 一文
    1999 年 1999 巻 204 号 p. 679-686
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    中央部が長方形切り欠き、その両側が1: 7の三角堰型傾斜隔壁を有するハイブリット式魚道に関して水理模型実験を行い、越流形態と流量係数について検討した。その結果、流量やプール長の条件によって中央部の流れがプールタイプの流れからストリームタイプの流れに変化することがわかった。流れの分類については、PL/B=0.46 (PL: プール間水平長、B: 魚道幅) の場合、L/PL値 (L: 切り欠きからの落下水脈の水平距離) が約0.55以上になるとストリームタイプの流れになることがわかった。プールタイプの流れの流量係数については、切り欠き部のみの場合と傾斜隔壁から越流する場合に分けて整理した。切り欠きのみの流量係数は、落下水脈の水平距離とプール長との比が0.3以上になると、接近流速の影響を受け0.6より大きくなることがわかった。一方、傾斜隔壁から越流する場合は三角せきから越流する流れに近似し、その実験式を得ることができた。
  • ハイブリット式魚道に関する研究 (II)
    泉 完, 工藤 明, 相場 一文, 佐藤 正一
    1999 年 1999 巻 204 号 p. 687-696,a1
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    中央部が長方形切り欠き, その両側が1: 7の三角堰型傾斜隔壁を有するハイブリット式魚道に関して水理模型実験を行い, プール内の流況について検討した。その結果, プールタイプとストリームタイプの流れを3次元および2次元ベクトル流速分布で把握することができた。とくに, ストリームタイプの流況は, 中央部の切り欠き越流水脈による卓越流が表層を走る擬似滑面流と, 切り欠き高より低い位置での隔壁間で回転流が形成されることがわかった。また, 傾斜隔壁部では落下流れが形成され, このタイプの特徴が見られた。ここで, 実際への適用については, 限界流速を2m/s~3m/sの範囲を想定し, スケール比1/5でフルード相似則を用いれば, ストリーム流れになるプール水平長と水路幅との比が0.46の魚道の場合, 魚道流量は最大3.0m3/s程度になると考えられた。
  • 圃場整備事業の効果に関する統計学的考察 (2)
    國光 洋二
    1999 年 1999 巻 204 号 p. 697-704,a1
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    圃場整備事業の効果発現状況を明らかにするため、統計学的手法を適用した分析を試みた。その結果、以下の三点が明らかになった。第一に、整備により労働生産性は大幅に向上するが、土地生産性はほとんど変化しない。資本生産性の変化方向は経営規模により異なり、小規模層、中規模層では低下、大規模層では横這い、規模拡大指向の強い担い手農家では向上している。第二に、費用対効果分析の結果は、事業地区内に小規模農家の耕作田が残っている状況にもかかわらず、全国平均の内部収益率が4%を超えている。第三に、事業効果のうち営農経費節減効果を高めるためには、規模拡大指向の強い受益者に農地を集積すること、農業機械の過剰投資が生じないような政策誘導を図ること、平坦部の地区や湿田地区を優先して整備すること、パイプライン化を図ることが有効であると、完了地区の実績値から示唆し得る。
  • 初期亀裂長と供試体直径との関係
    西村 眞一, 清水 英良
    1999 年 1999 巻 204 号 p. 705-710,a1
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    フィルダムの堤体あるいは基礎で生じる漏水の原因の一つとして考えられる水理破砕は破壊靭性により定量的に扱えることが分かってきた. その簡便な測定方法の一つとして円柱供試体を用いた三軸試験機による測定がある. しかし, 破壊靭性は理論的には無限な広がりをもつ地盤において考えられているため, 室内で測定する場合には理論的仮定が満たされず, 測定を行う上での問題点と考えられる. そこで, 本研究では同一サイズで大きさの異なる初期亀裂をもつ幾つかの供試体において破壊靭性を測定し, 初期亀裂長が破壊靭性に及ぼす影響を調べた. また, 亀裂先端付近の応力を理論式と有限要素法による数値的解法により求めて両者を比較することで室内実験に適切な供試体直径と初期亀裂長の関係を検討した.
  • Nguyen Canh THAI, 青山 咸康, 長谷川 高士
    1999 年 1999 巻 204 号 p. 711-718,a2
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    時として厚さが0あるいは非常に薄い境界面要素を生成するため必要な多数のデータを作成するのが困難な場合がある。本論では、要素の材料物性値からジョイント/境界面要素の位置を決定する方法を述べる。特別の方法により、ある節点の周りの要素を記録することζ より、追加の節点と境界面位置を正確に知ることができる。必要となる追加のデータは小規模なものである。この方法はすべての1次元あるいは2次元問題に適応可能であり且つ僅かの修正により自動メッシュ生成のプログラムへ転用できる。本手法の有用性を示すため、複合材料あるいは地盤補強材料を含む複雑な領域における境界面要素生成が本手法によりうまくできることを示した。
  • スーダン国ゲジラ灌漑地区を例にして
    A. W. ABDELHADI, 畑 武志, 田中丸 治哉, 多田 明夫
    1999 年 1999 巻 204 号 p. 719-726,a2
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ゲジラ地区の作物要水量 (CWR) はペンマン式による長期平均蒸発量 (E0) にAdamとFarhrotherによって求められた各期の作物係数を乗じて推定される。1966~1993年の最新の気象データを収集し、月間のE0とCWRを算定した。E0値に関して気候変化の影響を吟味した。過去の栽培小麦品種と現在の栽培品種の作物要水量の違いを同じ時期の気象データを用いて比較した。それらの結果、最近の気候変化は7, 8, 9月の高いE0値をもたらしており、近年のアフリカの干ばつに起因する蒸気圧不足の増大によっていると説明できる。全期間平均のE0値を使用した場合は、最近の10年間の平均値を使用した場合に比べCWRは4%(約2.1億m3) の過小推定になる。各月間E0値の超過確率算定式を求めたが、R2が0.94~0.99と高い精度で推定できた。過去の栽培品種の小麦要水量は現在の品種とはかけ離れた値となり、今日ゲジラ地区で使用される作物係数は現在の栽培品種には適用すべきでないことを明らかにした。
  • 郡山 益実, 瀬口 昌洋, 加藤 治
    1999 年 1999 巻 204 号 p. 727-734,a2
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    浅海干潟域における底質の巻き上げ, 輸送現象を明らかにするには, 波と流れ共存時の干潟表面に作用する剪断応力の定量的かつ定性的な把握が不可欠である. 本研究は, 共存場における底面波動境界層付近の剪断応力を理論的に解析し, その特性を明らかにしようとしたものである. まず, 共存場の流速さらには剪断応力が, 定常流成分に対する3層時間不変渦動粘性係数モデル及び波動流成分に対する2層時間不変渦動粘性係数モデルに基づいて理論的に求められた. そして, 定常流と波動流成分の流速分布及び最大底面剪断応力の解析値は, 実験値と比較的良く一致し, 流速及び剪断応力の理論的解析の妥当性が検証された. さらに, 剪断応力の解析結果を基に, 共存場における底面波動境界層付近の剪断応力の分布性や最大底面剪断応力と共存場の物理的パラメータとの関連性が明らかにされた.
  • 佐々木 長市, 稲垣 元昭, 江成 敬次郎, 小関 恭
    1999 年 1999 巻 204 号 p. 735-742,a2
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    火山灰地域の砂礫水田模型 (3層構成: 作土, スキ床, 心土層) を作製し, 稲を植え, 施肥をした条件下で心土層の浸透型のみを開放浸透と閉鎖浸透に変えた場合の物質動態を究明した. この結果より, 降下浸透水中の硝酸, 亜硝酸, 鉄, マンガンの各イオン濃度及びDO濃度は, 閉鎖浸透層に比べ開放浸透層で高まる傾向が認められた. 速効性肥料であるカリウムの降下浸透水中の濃度は, 施肥後約50日間は作土・スキ床層中でその値を高めるが、その後はどの層の値もほぼ類似したものとなった. 湛水中の全窒素濃度は, 実験開始後約60日間は排水の濃度に比べ低い値となった. それ以降はほぼ同じ値となった. 全リン濃度も同様の結果であったが, 排水濃度の高まる期間は30日間程度であった.
  • 長利 洋, 小野寺 忠夫
    1999 年 1999 巻 204 号 p. 743-750,a2
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    圃場整備におけるブルドーザの走行むらが生育むらや不同沈下の原因ともいわれているが, ブルドーザの走行実態については必ずしも明らかでない. そこで, 水田圃場整備整地工事におけるブルドーザを自動追尾し, 整地工事におけるブルドーザの正確な走行軌跡 (ブルドーザの高さ情報を含む位置情報) を記録した. この記録をもとに, 圃場をメッシュに分割したピクセルを単位として, 圃場内地点毎のブルドーザ履帯の作用回数および切盛り作業に伴う地盤標高変化を算定した.
    その結果, 1) 圃場内の地点毎にブルドーザ展帯の作用回数は大きく異なる. 2) レーザーレベルブルドーザを使用した均平作業においても試行錯誤により所定の高さに仕上げている, などの実態を明らかにした.
  • 島田 清, 森井 俊広, 藤井 弘章, 西村 伸一
    1999 年 1999 巻 204 号 p. 751-756,a2
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    飽和一不飽和浸透流解析のための有限要素解析と斜面安定解析のための離散化極限解析を結合した新しい数値解析プログラムを示した. このプログラムは, 非連成解析手法を採用し, 降雨浸潤による不飽和土のせん断強度の変化をマトリックサクションの変化にともなうせん断強度定数の変化として取り扱う. これにより, 斜面に降雨があった場合, 不飽和領域については浸潤によるせん断強度低下を考慮し, 飽和領域については有効応力解析を実施して, 斜面安全率の変化を計算することが出来る. あるモデル斜面に対する計算結果から, 地下水面が発達する前にも斜面表層部においてせん断強度の低下が起きて斜面崩壊が起こりうること, また, 降雨強度が大きいと斜面の安全率は早く低下すること, などが分かった.
  • 藤井 秀人, 桐 博英, 中矢 哲郎
    1999 年 1999 巻 204 号 p. 757-764
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ディファレンシャルGPS (DGPS) を利用した漂流式ブイによる流況・水質観測装置を開発した。本論文では、開発した装置の概要と現地実証観測結果について報告する。本装置を用いて、有明海沿岸域の流況観測を実施し、防潮水門下流域の流況と流れに乗った水質 (塩分濃度と濁度) を測定した。その結果実用的な精度で流況や水質が観測できる見通しをつけた。今回開発した装置は、(1) 表層流れの流跡線や流速を容易に把握できる、(2) 淡水と海水の2種類の流れが合流する場での流れの解明に有効な観測手法になる、(3) 各種の水質測定器を取り付けることが可能である、(4) 洪水時など危険な時でも危険な作業を改善できる、等の特徴を有している。本装置は河口域から海域における広範囲の流況と水質を容易に高精度に観測する手法として有効な手段であると考える。
  • フィリピンの転換畑における作物水分消費の研究 (IV)
    金森 秀行, 吉川 雅夫, 徳永 豊, 宮野 敬介
    1999 年 1999 巻 204 号 p. 765-776,a3
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本報では, 開発途上国の転換畑で土壌水分減少法を適用して, 最大収量を得る灌水開始点を判定する方法を検討した. まず, 7作物を3つの異なる灌水開始点で栽培して, 灌水開始点と収量, 消費水量, 有効土層厚および表層の水分消費率の関係を分析した. 次に, 各作物で最も収量の多かった試験区の日消費水量と計器蒸発量の比率 (消費水量比) を求め, その土中水の減少に伴う低減動向を回帰分析した. その結果,(1) 制限土層の消費水量を基に低減動向を分析すること,(2) 消費水量比が緩やかに低減して限界水分点以降は急に減退する場合は, 限界水分点を灌水開始点とすること, および (3) 消費水量比が次第に低減して限界水分点以降は低減がゼロに近くなる場合は, 乾燥による減収度を分析した上で, 他の制約要因をもとに灌水開始点を設定することの, 3つを提言した.
  • 坂西 研二, 麓 多門, 大脇 良成, 菅原 和夫
    1999 年 1999 巻 204 号 p. 777-783,a3
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    Disdrometerは, 可動コイル型マイクロフォンの振動コーンに雨滴を衝突させ, その運動量から雨滴の粒径を推定する装置である. 本機は, 雨滴粒径0.3mm以下では感知不能であり, 粒径1mmまでは感知漏れもある. 感知不能, 漏れ部分の雨滴粒径分布の推定は, 清野らの資料を基に作成した指数関数式で求めた. つくばでは, D-meter雨量値は測定不能と感知漏れ部分があるため雨量計雨量値を下回った. 石垣島では, D-meter雨量値は雨量計雨量値に等しかった. その理由は, 雨滴の粒径分布が広がり, 測定不能および感知漏れ部分の割合が相対的に小さくなったことと, 台風時雨滴の水平方向の力がゆるい傾斜をもつ振動コーンに働くためと考えられた. 降雨強度に対するD-meterによる降雨エネルギーKE値は, 従来からある三原式を下限とし, Wischmeier式を上限として分布していた. また, 降雨強度30mm/h以下でも粒径の大きい雨滴が多いというのが石垣島の特徴であり, その粒径分布は, 1~5mm粒径まで広く分布し, つくばでは雨滴粒径1~2mmの範囲に分布が集中していた.
  • 岩手県豊沢川の事例
    黒川 泰代, 三輪 弌
    1999 年 1999 巻 204 号 p. 785-792
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    東北地方に多い中小規模の扇状地河川の一例として, 岩手県豊沢川を取り上げ, 航空写真判読を主とした河道変遷調査を実施した. この規模の河川は, 河床の縦横断測量や災害履歴の記録も未整備で, 河川資料から当該河川の河道変遷を明らかにすることは困難な場合が多い. そこで, 昭和22年に始めて撮影されて以来, 少なくとも10年に1度くらいは撮影されている航空写真の比較判読によって, 自然河川に近かった豊沢川が人工改修河川に変わっていく様子や整備された低水路内での砂礫堆形成と経年的な変化, 典型的な河道災害状況など, 中規模の扇状地河川の河道変遷の実態を明らかにし, 同時に, 航空写真の比較判読を主とする調査の有効性を例示する.
  • 吉田 信弘, 田中 博文, 稲垣 仁根, 近藤 文義
    1999 年 1999 巻 204 号 p. 793-805
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    リモートセンシングデータとしてLandsat-TMとSpot-XSを用いて, 奄美大島名瀬地区の土地被覆分類を行ったところ, 奄美大島のように複雑な地形の地域では, 1シーンの全域を対象としたサンプリングデータに基づいて得た核クラスターを適用して土地被覆分類を行うと, 森林及び市街地, 珊瑚礁は明確に分類できるが, 農地の分類精度に課題のあることが明らかとなった.
    そこで, 国土数値情報の1/2地域メッシュデータには, メッシュ毎に農用地, 市街地などの土地利用計画区分が分類されているので, メッシュ毎にサンプリングを行い, クラスター分析により核クラスターを作成した。さらに, この核クラスターを全域に適用して土地被覆分類を行ったところ, 農地の分類区分を向上させることができた. 国土数値情報のようにすでに得られている対象ピクセルに関する情報を有効に利用することで分類の精度を向上させることが可能になる.
  • 森井 俊広, 井上 光弘, 竹下 祐二
    1999 年 1999 巻 204 号 p. 807-816,a3
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    プレッシャーインフィルトロメータ法を用いた原位置透水試験法の試験理論を紹介し, 適用上の問題点を検討した. この試験法は, 土壌表面にわずかに挿入した単一リング内からの定水頭浸潤にもとついて, ほ場の飽和透水係数を測定する. 算出式が浸潤理論にもとづき, かつ試験方法と装置が非常にシンプルであるという利点をもつ. まず試験法の理論的な特徴をまとめた. リングからの三次元流れを考慮した点, ならびに土の不飽和透水係数を圧力水頭の指数関数で単純化した点を指摘した. 次いで。公表されている土壌データの分析と定水頭浸潤を模擬した数値計算をおこない, 指数関数による単純化がほ場飽和透水係数の測定精度に重要な影響をもつこと, またこれまでに推奨されてきた土の指数関数パラメータが, 実際の値より大きめであることを明らかにした.
  • 小路 順一, 籾井 和朗, 神野 健二, 國武 昌人
    1999 年 1999 巻 204 号 p. 817-824,a4
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    沿岸地域の地下水は, 貴重な淡水資源として種々の生産活動に利用されている. この地下水の水質環境を保全・管理するため、複雑な海水侵入機構を解明することは極めて有意義なことである. 混合域における塩分濃度の分布は, 有限要素法, 差分法と特性曲線法を併用した手法など種々の数値解析が研究されている. 本研究では, 差分法と特性曲線法を併用した数値モデルの妥当性を既研究結果と比較し, 検証した. 次に淡塩水混合域の分散特性について検討を加えた. さらに、潮汐に対する応答について、特に透水係数の異なる成層被圧帯水層を対象に数値解による検討を行った. 特性曲線法による計算結果は現地で観測された混合域の挙動を概ね説明しており, 有効な計算手法といえる.
  • 北辻 政文, 大西 崇夫, 藤居 宏一
    1999 年 1999 巻 204 号 p. 825-830,a4
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究は, ごみ溶融スラグ (以下スラグという) をコンクリート用細骨材として利用するための実証試験の一環として, 鉄筋コンクリート製品を作製し, 実用の可能性について検討したものである. 試験には, コークスベッド方式ごみ溶融スラグを用いて, 基準細骨材 (砕砂) に対するスラグの置換率を質量比内割で0, 30, 50, 70%としたコンクリート製品 (側溝300A2種: JIS A 5345, ベンチフリューム4002種: JISA5318) を作製し, 強度および耐凍性について検討した. その結果,(1) スラグを用いたコンクリートの強度は, 砕砂のみのコンクリートと同等であること,(2) 置換率が高い場合, ブリーディングの増加に伴いコンクリートの耐凍性はやや低下することが明らかとなった. このためスラグをコンクリート製品に利用する場合, 天然砂と混合して使用することが望ましく, その際のスラグ置換率は50%以下とすることが良いと判断された.
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