抄録
中山間地域の農村振興を考えるにあたり, 付加価値の高い農産物を媒介として農村を活性化しようとする戦略がある.本論では, 雨除けトマト栽培を通して農村の活性化を図っている先進事例地区を対象に栽培施設 (雨除けハウス) の立地形態の側面から基盤条件を分析し, 今後の地域営農を支援する基盤要件を検討した.調査分析の結果, 雨除けハウスは散居形態にある個々の農家の近隣に立地し, 圃場整備後の整形区画で日照と通風に恵まれ農産物の搬出作業性に優れた短辺方向に建てられている.また, 水利条件が整い, 下層が礫質の排水のよい基盤条件にあることがわかった.水田の生産調整を契機として適切な作物の選択と普及活動に支えられ, 圃場整備によって作物生育の物理的, 生理的条件が整っただけではなく, 集約的な栽培管理が可能な集落形態にも支えられていることが明らかになった.今後, とくに雨除けハウスによる降雨流出の増加に対する排水路整備が重要である.