抄録
本研究では, 相対的に条件の不利な地域の活性化のために推進されてきた地域活性化事業の中で, 韓国の山茱萸祭りを事例として, AHP法を用いて本事業の効果を分析し, 定住環境改善に及ぼす影響について考察した.
研究の結果, 山茱萸祭りは全般的に多様な成果が得られ, とくに, 地域住民の所得増大と生活の質の向上に寄与したことが明らかとなった.しかし, 中山間地域の緊急な課題である過疎化と高齢化に対する効果, 及び地域住民の生活の活動空間である生活環境改善への効果は微弱であった.より効率的に活性化事業の効果を高めるためには多くの住民参加による事業の企画立案・事業実施が有効であり, 一時的なイベントに終わることなく, 年間にわたって多様なプログラムによる継続した事業の実施が必要であると考えられる.また, 将来の地域活性化及び定住環境改善のためには, 積極的な交流事業の推進とともに高齢化社会に対応するための保健・医療福祉, 自然景観を生かした生活環境整備が, 今後の最優先の課題として明らかとなった.