抄録
本論文は傾斜裏込め土を有する擁壁に作用する土圧の算定法を提案している. 二つの直線すべり線の仮定から誘導される力の釣り合い式を繰り返し計算することによって最適なすべり線が得られることを示した. 粘性土及び非粘性土の主働土圧と受動土圧について他の研究結果のいくつかと比較したところ, 非粘性土の場合, すべのケースで受働土圧係数は本提案式の方がCoulomb式のそれよりも低いのに対し, 内部摩擦角が30°以上では対数螺旋法の方が大きい値となった. 粘性土の場合は粘着力の変化に伴う土圧の変化は提案式とCoulomb式とでは大差なく, 粘着力の値が大きいほど主働土圧の減少率は高い傾向を示した. 結論的には本提案式から得られる土圧はCoulomb式による値よりは小さいが他の方法, たとえば, Caquot & Kerisel法やスライス法よりは大きくなった.