農業土木学会論文集
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2004 巻, 232 号
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  • サトウキビを事例として
    吉永 安俊, 酒井 一人
    2004 年2004 巻232 号 p. 345-353
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究は石灰岩地帯の圃場整備における最適有効土層深をサトウキビを用いて明らかにしたものである. 最適有効士層深の決定は, 同一圃場に深さ40cm, 60cm, 80cmとする12m×15m広さの区画を設け, 無灌漑および灌漑条件下でサトウキビを栽培し, 蔗茎重および甘蔗糖度から産糖量を求め, それらを比較する方法で行った. その結果, 高い産糖量を実現する有効土層深は無灌漑条件と灌漑条件では異なり, 無灌漑条件では80cm区が最も良く, 灌漑条件では60cmで最も良い結果が得られた. したがって, 灌漑を前提とした石灰岩地帯の圃場整備における有効土層深は60cm程度であることが明らかになった.
  • 伊藤 健吾, 千家 正照, 三浦 健志, 橋本 岩夫
    2004 年2004 巻232 号 p. 355-362
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ハウス化率がファームポンドおよび配水施設の必要容量に及ぼす影響を明らかにするため, ハウス化率が異なる畑地灌漑地区において水利用の実態調査を行つた. はじめにファームポンド貯水容量の経時変化を実測し, 調整容量と日配水量を算定した. しかし, 実際の水利用状況は, ファームポンドの調整容量や配水施設容量の制約を受けている場合があるため, これら水利用の実測データからハウス化率の影響を明らかにするのは困難である. そこで, 日配水量に対する調整容量の比を示すaおよび水利用の時間的集中度を示すFの2種類の指標を提案し, 日配水量が出来るだけ大きく, かつ水利用の制約が生じていない場合のaFの値を推定した. その結果, ハウス化率の高い地区でaFは大きな値を示した. このような水利用の集中状況を, 実際には制約が生じている日配水量の大きい場合にも実現できるような必要水量を検討したところ, ハウス主体地区では約40m3/haとなった.
  • Mu Mu Than, 井上 宗冶, Zakaria Hossain
    2004 年2004 巻232 号 p. 363-369
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本論文は傾斜裏込め土を有する擁壁に作用する土圧の算定法を提案している. 二つの直線すべり線の仮定から誘導される力の釣り合い式を繰り返し計算することによって最適なすべり線が得られることを示した. 粘性土及び非粘性土の主働土圧と受動土圧について他の研究結果のいくつかと比較したところ, 非粘性土の場合, すべのケースで受働土圧係数は本提案式の方がCoulomb式のそれよりも低いのに対し, 内部摩擦角が30°以上では対数螺旋法の方が大きい値となった. 粘性土の場合は粘着力の変化に伴う土圧の変化は提案式とCoulomb式とでは大差なく, 粘着力の値が大きいほど主働土圧の減少率は高い傾向を示した. 結論的には本提案式から得られる土圧はCoulomb式による値よりは小さいが他の方法, たとえば, Caquot & Kerisel法やスライス法よりは大きくなった.
  • 小林 晃, 近藤 修一, 青野 智則, 青山 咸康
    2004 年2004 巻232 号 p. 371-378
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ダム湖周辺地山や斜面の地すべりは, ダムや道路の安全性および機能を損なう可能性があり, 事前に予知することができれば, その対策・避難法の選択により重大な事故を防ぐことができる. 本論は, そのような斜面崩壊を遠隔監視・分析する指標を明にするために模型実験による基礎的検討をしたものである. 現在種々の技術が開発されている三次元変位観測手法において, その指標とするべきパラメーターについて検討した. 室内での斜面崩壊のモデル実験において, 二台のカメラを用いた三次元変位観測システムを構築し, 崩壊斜面の変形・破壊挙動を分析した. その結果, 面積ひずみに着目した三次元変位計測により斜面崩壊予測が出来る可能性があること, 斜面表面の法線ベクトルの変化を求めることにより, 遠隔から斜面の崩壊形態と規模が計測できる可能性があること, そして斜面崩壊の崩壊崖が新たな排水面となった場合, 残留地下水位が低下して, 崩壊の継続が中断する可能性があることがわかった.
  • 坂口 義英, 山本 太平, 井上 光弘
    2004 年2004 巻232 号 p. 379-385
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 高い塩濃度の浴夜を含む土壌で精度よく体積含水率 (θ) および土壌溶液濃度 (C) が測定できる, ADR水分センサおよび4極塩分センサの校正式について検討し, 各センサの測定精度を評価することである. 両センサはθおよびCが既知である砂丘砂カラムを用いて校正を行い, 各センサの実験式を求めた. θの実験式において,(i) 実験係数が一定値の場合 (一定法),(ii) 実験係数が変化する場合 (試算法), について検討した. 水収支, 塩収支よりライシメータ土層内の水分および塩分貯留量を求めたところ一定法と試算法は従来法に比べ, 実測法との誤差が大幅に改善された. 特に試算法では高い精度で計測出来た.
  • 沖縄県における赤土流出モデル化に関する研究
    大澤 和敏, 酒井 一人, 田中 忠次, 吉永 安俊
    2004 年2004 巻232 号 p. 387-394
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    沖縄県では近年, 過度の赤土流出が問題となり, 農地における土壌侵食の予測方法の確立が求められている. 本研究では, 沖縄地方における基幹作物であり, 主要な土砂発生源の一つであるサトウキビ畑を対象として, 侵食量の長期連続観測および多点同時観測を行った. 得られた結果を検証データとして, 代表的な侵食モデルであるUSLE (Universal Soil Loss Equation) およびWEPP (Water Erosion Prediction Project) の適用を降雨毎に行い, モデルの予測性を検討することを目的とした. USLEを適用した結果, 土壌の攪乱が無い時期では, 観測した侵食量に対して高い適合性を示した. WEPPは全般的にUSLEより精度が高く誤差のばらつきが小さかったので, USLEより適用性が高いと評価できる. さらに, 各モデルにおける問題点および改良点を観測された時系列データなどを用いて検討した.
  • 小島 倫直, 宮崎 毅
    2004 年2004 巻232 号 p. 395-402
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    不飽和成層土壌では, 土層境界面上でキャピラリーバリアに由来する局所的な水移動が観察されることがある. キャピラリーバリアの効果を超えて下層土に水が浸潤する地点までの距離, すなわち限界長は, 地下空間保全技術において保全可能な地下範囲を決定するため重要である. 限界長は, 土層境界面が平坦斜面の場合について理論的予測が行われてきた. しかし限界長を実測した研究は少ない. 本研究では限界長を実測し, 既往の予測式の有効性について考察を行った. この結果, キャピラリーバリア現象には水浸入値および空気侵入値が大きく関係し, この値を考慮した予測式が適用可能とわかった. また, この知見を利用し, 土層境界面が湾曲形状時の限界長測定, 予測方法の提案も試みた. これにより湾曲斜面における限界長予測が可能であり, 現象を応用した地下空間保全技術において有効な土層境界面形状があることがわかった.
  • 加藤 亮, 黒田 久雄, 中曽根 英雄
    2004 年2004 巻232 号 p. 403-410
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    近年, 物質循環により自然系へ流出する汚濁負荷を削減する手法が注目されている. 本研究では流域水質管理の観点から, 霞ヶ浦流域を対象に窒素負荷対策案として物質循環を考慮したシナリオを評価するシステムの構築を試みた. 流域を6つのブロックに分割し, 市町村統計データを基にしたGISデータベースから各ブロックの窒素排出負荷を計算した後, これまで開発してきた土地利用別水質タンクモデルを用いて霞ヶ浦今の流出負荷を算定した. 堆肥のリサイクルを想定した物質循環に関する4種類のシナリオを考え, 流出負荷の長期予測を行った. その結果, シナリオとブロックの特徴により約10~40%の窒素負荷削減率を出力し, ブロック間で堆肥の移動を行うシナリオでは, 移動なしのシナリオに比較して余剰の堆肥が生産されるブロックでは窒素負荷が減り, 堆肥を受け入れたブロックは窒素負荷が増える出力を得た.
  • 古川 政行, 金木 亮一
    2004 年2004 巻232 号 p. 411-417
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    面源負荷の対策の一つとして, 琵琶湖周辺にある内湖の水質浄化機能を利用することが挙げられる, 本研究では, 内湖を対象に水質シミュレーションモデルを作成し, 内湖の水質の推定および水質浄化効率を上げるための方策を検討した. このモデルは, タンクモデルとL-Q式から成る「流入負荷推定モデル」, および, 水収支式と生態系モデルから成る「水質推定モデル」の2つのサブモデルで構成されている. なお, ここで対象とした彦根市の野田沼は短絡流の部分と滞留部分に分かれるため, 沼を2個のボックスに分けて水質を推定した. さらに, このモデルを用いて, 循環灌漑施設の稼動期間を延長した場合について, 内部生産の抑制効果のシミュレーションを行った. その結果, 稼動期間を20日間延長した場合, 内部生産によるCOD濃度の上昇を抑制し得ることが判明した.
  • 緒方 英彦, 服部 九二雄, 野中 資博, 長束 勇, 青山 咸康
    2004 年2004 巻232 号 p. 419-425
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では, 高炉セメントを用いた柱状レヤー工法による重力式コンクリートダムを対象に, これまでコンクリートダムの温度応力解析では考慮されることがなかった自己収縮が解析結果に及ぼす影響柱状レヤー工法における解析モデルおよび外気温の適切な設定方法について検討を行った. その結果, 次のことが明らかになった.(1) 自己収縮は重力式コンクリートダムの温度応力解析に大きな影響を及ぼす.(2) 柱状レヤー工法で打設する場合においても, 二次元平面ひずみ解析により, 実用上十分な解析結果を得ることができる.(3) 提案する外気温推定モデルを用いることで, 外気温の変動を考慮に入れた温度応力解析を行うことができる.
  • 松嶋 茂之, 今井 俊雄, 田中 良和, 中 達雄
    2004 年2004 巻232 号 p. 427-432
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    先に筆者らは, 鋼管敷設の信頼性や大幅な施工性の向上を目的として, 鋼の延性・靭性およびゴムの弾性を活用した構造を特長とする拡径接合工法を考案した. 同工法による継手部は, 従来の溶接継手と比較して内面形状の凹凸が大きく, 水理性能を確認する必要があった. そこで, 拡径継手ならびに溶接継手を用いた小口径の供試管により水理実験を行い, その水理性能を相対的に評価した. また, 実際に同工法により現場施工された管路において実証試験を行い, 水理実験の結果を検証するとともに, 同施工法による管路の水理設計において採用すべき流速係数を検討した. 拡径接合工法による管路の水理性能は, 継手の向きによらず従来の溶接鋼管と同等以上であり, 溶接鋼管と同じ流速係数 (C=130) を用いれば少なくとも安全側であることがわかった.
  • 質問紙調査における提示属性数の削減
    合崎 英男, 佐藤 和夫, 長利 洋
    2004 年2004 巻232 号 p. 433-441
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農業・農村の持つ多面的機能を個別機能ごとに経済評価することに関心が集まっている. それを可能とする手法の1つとして選択実験がある. 選択実験はCVMと同様に質問紙調査からデータを得る. ところが, 人間は同時に7つより多い項目を一度に評価することが困難なため, 質問紙調査を通じて多数の個別機能を同時に評価することは難しい. 本稿では, 選択実験による多面的機能評価において, 評価対象とする個別機能を回答者による各機能の重要度評価により絞り込む手順を提案し, 茨城県土浦市の一般世帯を対象として適用可能性を検証した. 評価対象とした多面的機能は, 洪水緩和, 地下水かん養, 土壌流亡抑制, 保健休養, 生物保全, 景観管理, 水環境保全, および有機性廃棄物処理の8機能である. 重要度評価から上位に評価された機能は統計的に有意な結果が得られたものの, 下位に評価された機能については観測値数が少ない場合には有意な結果が得られにくいことが示された. 本稿で提案した手順を活用するためには, 予備調査の結果から本調査に必要な観測値数を推定する必要がある.
  • 石黒 覚
    2004 年2004 巻232 号 p. 443-447
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    籾殻灰および天然ゼオライトを混和材として用いた場合のアルカリ骨材反応の膨張抑制効果をモルタルバー法 (JIS A 1146) に基づき調べた. 籾殻灰および天然ゼオライトを混入したモルタルの長さ変化を材齢2年まで計測し, シリカフユーム, 高炉スラグ微粉末, フライアッシュなどの各種混和材を混入した場合と比較した. 本実験結果から, 籾殻灰を結合材質量の内割りで10%混入することにより, また, 天然ゼオライトでは結合材質量の15%を混入することによりアルカリ骨材反応による膨張を抑制できることを確認した. また, 各種混和材を混入したモルタルの膨張挙動の相違について比較検討した.
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