抄録
近年, 物質循環により自然系へ流出する汚濁負荷を削減する手法が注目されている. 本研究では流域水質管理の観点から, 霞ヶ浦流域を対象に窒素負荷対策案として物質循環を考慮したシナリオを評価するシステムの構築を試みた. 流域を6つのブロックに分割し, 市町村統計データを基にしたGISデータベースから各ブロックの窒素排出負荷を計算した後, これまで開発してきた土地利用別水質タンクモデルを用いて霞ヶ浦今の流出負荷を算定した. 堆肥のリサイクルを想定した物質循環に関する4種類のシナリオを考え, 流出負荷の長期予測を行った. その結果, シナリオとブロックの特徴により約10~40%の窒素負荷削減率を出力し, ブロック間で堆肥の移動を行うシナリオでは, 移動なしのシナリオに比較して余剰の堆肥が生産されるブロックでは窒素負荷が減り, 堆肥を受け入れたブロックは窒素負荷が増える出力を得た.