本研究では, 溜池底泥からのリン・窒素放出に及ぼす処理水送水の影響を明らかにするため, 愛媛県D池を調査した. その結果, D池への処理水送水量の多い年は, 少ない年に比較して底層水のT-P・PO4-P・NH4-N・Org.-N濃度は低かった。また底層水では, DO濃度が高いほどTP・PO4-P・NH4-N・Org-N濃度は低く, DO濃度が0.1mg・L-1以下では, NOx-N濃度が高いほどTP・PO4-P濃度は低かった. 一方, Crを処理水の混入指標とした場合, 処理水送水量が多い年に底層水の処理水混入量は多く, 処理水混入量が多い時に, 底層水のDO・NOx-N濃度は高かった.これらの結果は, 溜池への処理水送水量が多いと, 底泥表面が嫌気状態になり難くなり, 底泥からのリン・窒素放出が抑えられることを示唆した.処理水送水により, 水温躍層の深さが顕著に深くなったり, 水温勾配が顕著に小さくなることはなかった.