抄録
食の安全・安心に対する関心の高まりを受け, 農産物のトレーサビリティが注目されている. ITを活用した情報の閲覧サービスが拡大している一方, このような情報が効果的に利用され0・ない面がある. この原因として, 情報の内容, 情報提供方法情報を提供する目的に曖昧な部分があることが関連している. そこで本研究では, これらの問題点を改善し食の安全・安心の確保をはかるため, 青森県の主要農産物であるリンゴの生産現場を題材に, トレーサビリティ情報の映像化と双方向のトレーサビリティ実現による食の安全・安心の確保を目的とした実証実験を行った.また, 映像記録が生産者, 消費者に及ぼす効果と問題点の検証を行った. その結果以下の点が明らかとなった.
1) 消費者は生産現場を映像として直感的に理解することが可能となり, 生産者および農産物に対する信頼感の構築に役立つ. 一方, 情報が誤解を生む危険性もあり, 生産者と消費者が情報を共有し意見を交わせる双方向性の高いトレーサビリティの実現が重要である。2) 生産者は顔が見える形で消費都こメッセージを伝えることが可能となる. 加えて, 映像を活用することで, 効果的な生産現場のリスク分意識改善が期待でき, 一連の活動を通じてGAPの達成につながる可能性を有している.