農業土木学会論文集
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2006 巻, 246 号
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  • 小貝川上流域を事例として
    柿野 亘, 水谷 正一, 藤咲 雅明, 後藤 章
    2006 年2006 巻246 号 p. 809-816
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    栃木県市貝町小貝川流域で属性の異なる5つの谷津を選び, 生息魚類の分布を把握するために調査を行った.その結果, ホトケドジョウは谷頭において, ヌマムツ, シマドジョウは谷尻において偏った分布を示した.ドジョウ, タモロコは谷津の中心に分散的に分布する傾向がうかがわれた.また, 谷頭から各Stまでの水路距離を尺度にして分布の支配的な環境要因を推定した.その結果, ホトケドジョウは水温と有意な負の相関が見られ, 水温が低いと生息密度が高くなった.シマドジョウは水温と有意にやや正の相関が見られ, 水温が高いと生息密度が高くなった.ヌマムツは積算落差高と有意にやや負の相関が見られ, 積算落差高が小さいと生息密度が高くなった.
  • 服部 九二雄, 佐藤 周之, 緒方 英彦, 野中 資博
    2006 年2006 巻246 号 p. 817-823
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では, 大規模構造物に使用されるコンクリートと同程度まで単位セメント量を小さくしたマッシブなコンクリート供試体を作製し, 超音波法および抜取りコアにより長期的な強度発現特性について評価した.標準供試体の試験結果から, 単位セメント量が小さいコンクリートの材齢56日以降の強度発現は極めて小さいことがわかった.また, 実構造物を想定したマッシブなコンクリート供試体の試験結果から, 単位セメント量の小さいコンクリートであっても, 超音波法を初期材齢から適用すれば強度発現特性を評価できること, 強度発現特性が初期材齢時の温度履歴に大きく影響を受けることが確認できた.抜取りコアの試験結果からは, 強度管理用供試体の試験材齢は56日で十分である可能性が示唆されるとともに, 適切な強度発現には初期材齢時の温度管理が重要であることがわかった.
  • 谷口 智之, 佐藤 政良
    2006 年2006 巻246 号 p. 825-831
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    水田用水量計画において独立の構成要素として取り扱われる栽培管理用水と配水管理用水が, 用水の安定性によってどのように変化, 変動するか, また, 相互関係しているかを検討した.調査は2年間, およそ2週間に1度の頻度で行われ, 重力連続灌漑地区 (小貝川水系) と揚水間断灌漑地区 (鬼怒川水系) を対象に, 各地区を上下流に分け, 配水量と両管理用水量を測定した.その結果, 以下が明らかになった.1) 用水条件が厳しい揚水灌漑地区および各地区の下流部で, 水田内留保率が低い結果となった.2) 用水が不安定であるほど上流部で過剰取水が起こり, 下流部の用水確保をさらに困難にしている.3) 二つの管理用水量は独立ではなく, 配水された用水は, まず湛水確保と栽培管理用水として利用され, 残りが配水管理用水として排水されている.
  • 緒方 英彦, 服部 九二雄, 平石 聖
    2006 年2006 巻246 号 p. 833-839
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では, 超音波法によるコンクリートのひび割れ深さ推定方法であるTc-To法, デルタ方式, 近距離迂回波方式を対象に, これまで明らかでなかったひび割れ深さ推定式の誘導過程および適用条件を検討した.また, ひび割れ深さの推定値が真値と異なる原因を検討するとともに, 発・受振子の好適設置位置を検討した.その結果, 次のことが明らかになった.(1) ひび割れ深さ推定式の誘導上は一致しなければならない健全部での伝播速度と探傷部での伝播速度が実際は異なる.(2) ひび割れ深さの推定値が真値に最も近くなるのは, 超音波がひび割れを直角回析する場合である.そして, 発・受振子の好適設置位置を決定する条件式を導いた.
  • Magch KHALIL, 関 勝寿, 宮崎 毅, 溝口 勝, 坂井 勝
    2006 年2006 巻246 号 p. 841-848
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ゼロフラックス面 (ZFP) とは, 浅い領域では蒸発に伴う水分の上方移動が, 深い領域では水分の下方移動が, 同時に起きている土壌において, 水分の上方移動と下方移動を分ける, 理論的にはフラックスがゼロとなる深さの平面である, 本研究では, ZFPの挙動を調べるために, カラム実験と数値実験によるシミュレーションを行った.黒ボク土に一度だけ水を供給し, 0.15cm/dayの蒸発速度と自由排水を与えたところ, 全水頭分布とZFPについて, カラム実験とシミュレーションの結果がほどよく適合した.立川ローム土に周期的水分供給を与えたところ, カラム実験とシミュレーションともに, 水分供給時に地表にZFPが現れ, ZFPは時間とともに下方へ移動し, 30cmの深さに到達したときにZFPが消失した.ZFPの消失は, 土壌深層部の初期水分量が高かったために起きたものであると考察された.
  • 山岡 伸也, 森下 智貴, 大坪 政美, 東 孝寛, 萩尾 俊宏
    2006 年2006 巻246 号 p. 849-855
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    管理型廃棄物処分場には遮水と汚染物質の吸着を目的として粘土ライナーが設置される.粘土ライナーが焼却灰の浸出液に曝されると本来の機能が損なわれる可能性がある.本研究では, 一般廃棄物焼却灰 (主灰と飛灰) の重金属と易溶性元素の長期的な浸出パターンを予測するため, pH2~5の硝酸と脱イオン水で110回の繰り返しバッチ試験を行った.浸出液のpHはpH2の溶媒では洗浄直後から急激に低下した.PbはpH3以上の溶媒では数mg/L浸出したが, Zn, Cuはほとんど浸出しなかった.pH2の溶媒ではいずれの重金属も数mg/L以上の浸出があった.易溶性元素は, Na, K, Cl, SO4は洗浄初期に急激に浸出し, その濃度は数mg/L程度にまで低下した・Caは洗浄回数が増えてもある一定の浸出濃度を維持したが, Mgは, pH2の溶媒以外ではほとんど浸出しなかった.
  • 長利 洋, 小野寺 忠夫
    2006 年2006 巻246 号 p. 857-864
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    圃場整備においては, まき出し厚や締固め回数を的確に管理することが重要である.このための方法として, 自動追尾トータルステーションや衛星測位システム等を用いて取得したブルドーザの位置情報をもとに, 締固めの作業範囲を格子状に区切り, その管理ブロックについての締固めの有無を確認して締固め回数を管理する方法がある.しかし, 管理精度は, 管理ブロックの大きさおよび締固めの有無を確認する管理方法によって変化する.本報告では圃場整備においてブルドーザを用いた締固め作業時の管理ブロックサイズと締固め判定方法について検討した.
    その結果, 圃場整備における締固め管理方法は, 管理ブロックサイズを20cmとしたブロック毎の作業割合により管理する作用割合法を採用すれば, ブルドーザの履帯幅によらず適切であることを明らかにした.
  • 寺田 憲治, 吉田 謙太郎
    2006 年2006 巻246 号 p. 865-870
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農地が有する食料安全保障機能に係る便益は, 農地の存在そのものに由来するものであり, ごく一部の農地であっても日本国民全体に波及する便益であるという特徴を有することから, 多くの施策の費用便益分析に適用可能であるものの, 未だ実用的な結果を得られていない.本稿では農地が有する食料安全保障機能便益について, 他の代替施策と比較しながら選択型実験を用いて評価を行った.また地域食料自給率が便益評価に与える影響を調べ, 便益の共通性を検証した.分析の結果, 地域食料自給率が便益評価に影響を与えない可能性があることがわかり, また食料安全保障用に8,500ha (主食用食物の国民消費量1日分を緊急増産可能) の農地を確保した場合の1世帯あたり年間支払意思額を算出したところ, 162.9円という結果を得た.
  • 石黒 覚
    2006 年2006 巻246 号 p. 871-879
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ダムコンクリートの破壊力学パラメータを求めるために楔挿入割裂法に基づく破壊試験装置を作製し, 切欠きを有する立方型供試体を用いてモード1破壊試験を実施した.荷重-開口変位の計測結果から破壊エネルギーを算定し, また, 多直線近似解析法を適用して引張軟化曲線を推定した.これらの解析結果から, ダムコンクリートの引張軟化モデルを提案し, 供試体の破壊解析を行ってその適用性を検討した.本研究結果から, ダムコンクリートの破壊エネルギーの算定値は, 圧縮強度および粗骨材最大寸法から推定した値よりも大きいことがわかった.また, 提案した引張軟化モデルによる解析結果は, 二直線モデルおよび指数曲線モデルのそれらに比べて試験結果とよく一致した.
  • 中村 真人, 柚山 義人
    2006 年2006 巻246 号 p. 881-890
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    肥料成分調整コンポスト製造のための基礎資料とするために, 日本標準飼料成分表等を活用して, 各種バイオマスを分類し, 肥料成分, 分解特性等の項目の整理と成分調整資材としての適用性の検討を行った.C/N比が20以下と低いヌカ類, 植物油粕類, 茶かすと作物副産茎葉類, 食品産業製造粕類のうち約2/3の資材は, 無機態窒素の有機化の恐れが少ないため.成分調整用資材として利用可能であることが示された.しかし, これらの資材の大部分は, 窒素の割合が相対的に高く, 窒素成分の成分調整資材としては利用できるが, リン酸, カリの調整材としての利用は難しいことが明らかになった.また, コンポスト利用者の品質に対する要望を調査し, 資材による成分調整の可能性を検討した結果, 混合する資材の選択によって, 要望を反映したコンポストに近づけることが可能であることを示した.
  • 農業用ため池と洪水調整池の事例研究
    多田 明夫, 百濟 昌人, 田中丸 治哉, 畑 武志
    2006 年2006 巻246 号 p. 891-902
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農業用ため池 (谷池) と洪水調整池の2種類の小型貯水池を対象に, 水収支と物質収支の検討を行った.水収支については, 山林を主体とする農業用ため池の集水域からは降水量の35%がため池に流入し, 宅地からなる調整池集水域からは降水量の64%が調整池に流入していた.農業用ため池の回転率は年間9.2回 (低水時では4.6回), 調整池の回転率は441回 (低水時では58回) であった.物質収支については, 流入負荷量と流出負荷量の関係を見ると, 両池ともM-アルカリ度と電気伝導度で両者が均衡し, T-COD, D-COD, Chl-aでは流出負荷量の方が大きく, SiO2では流出負荷量がより小さくなった.窒素・リンでは両池で異なる結果が得られた.調整池では窒素の差引排出負荷量 (流出負荷量-流入負荷量) がマイナスとなりリンでプラスであったのに対し, ため池では窒素・リンともにトータル分でプラス, 溶存成分でマイナスとなった.この違いは池の回転率の違いにより生じた, 池内部の植物プランクトンや植物による吸収量の差によりもたらされていると考えられた.
  • 田中 良和, 島 武男, 向井 章恵, 樽屋 啓之, 中 達雄
    2006 年2006 巻246 号 p. 903-909
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農業水利構造物において自由水面が大変形する水理現象を技術者が容易に解析できるように, 粒子法による数値流体解析の統合環境を開発した.統合環境は, 前処理, 流体解析および後処理の処理過程で構成され, グラフィックユーザインタフェースによって容易に扱えるように工夫されている.本論では, 粒子法の解析に必要な前処理手法として製図データから計算点粒子を生成するアルゴリズムと境界条件の処理方法について提案する.活用例では, 水クッション型落差工における上流側の堰が水クッション部の水面動揺に及ぼす影響について解析する.落差工の上流側の堰が落下水脈の形状を変化させて水クッション部の水面動揺を抑制する役割を果たしていることが示唆されるともに, 本統合環境の自由水面が大変形する水理現象の解析に有効であることを示す.
  • 緒方 英彦, 服部 九二雄, 長束 勇, 朝河 哲也, 青山 咸康
    2006 年2006 巻246 号 p. 911-921
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では, フルサイズの粗骨材を用いたダムコンクリート供試体の自己収縮ひずみ試験を実施し, ダムコンクリートの自己収縮特性を検討した.その結果, フルサイズの粗骨材を用いたダムコンクリートでも自己収縮ひずみが発生することが実験的に確認され, 重力式コンクリートダムの温度規制計画では, 自己収縮ひずみを考慮した温度応力解析を行わなければならないことが明らかになった.また, フルサイズの粗骨材を用いたダムコンクリート供試体の自己収縮ひずみ試験方法の妥当性を二次元および三次元有限要素解析の結果より明らかにした.
  • 張 玉, 田中 清人, 杉山 博信, ウイタカ アンドリュ
    2006 年2006 巻246 号 p. 923-930
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    新潟県内に点在する6地方気象台での日降水量データを使用して, 降水量特性の周期変動を統計的に検討した.その結果, 日本海沿岸部に位置する新潟と村上の年降水量には20年前後の周期成分が卓越しており, この周期性は暖候期 (5~11月) 降水量と寒候期 (12~4月) 降水量のそれに類似していること, 一方, 多雪地域に位置する高田, 長岡, 十日町の各地点での年降水量には10~30年程度の周期が卓越しており, 寒候期降水量のそれに類似していることが分かった.また, 新潟, 村上, 高田の各地点での年降雪量には10~15年程度, 長岡, 十日町, 湯沢の各地点でのそれには30~40年程度の卓越した周期成分が存在していることが分かった.さらに, 各地点での年最大日雨量, 年最大ひと雨雨量, 及び年最大日降雪量には10~20年程度の周期成分が存在しているが, むしろ10年以下の短周期成分が顕著であると言える.
  • 浅野 勇, 向後 雄二, 林田 洋一
    2006 年2006 巻246 号 p. 931-938
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    粗骨材に5号砕石および再生骨材を使用し, 間隙比eおよびセメント水比αを変化させたポーラスコンクリート (POC) の圧縮強度試験を行い, その結果から圧縮強度fcをeとαの関数として表した.試験から求めた圧縮強度試験値fcfc, eおよびαを3軸とする強度空間にプロットした結果から, fcは強度空間内の一つの面上に存在すると推定した.この推定強度面を強度空間内の2本の直線の積として定式化し, 圧縮強度推定式を求めた.圧縮強度推定式から求めた予測値と強度試験値の相対誤差はほぼ±10%以内に収まった.以上から, 提案した強度推定式の予測精度は良好であることを確認した.
  • 新潟県での休耕田管理の実態調査に基づく検討
    有田 博之, 山本 真由美, 遠藤 和子
    2006 年2006 巻246 号 p. 939-945
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    将来, 食糧事情の逼迫が生じる場合を想定した農地資源管理方式として, 耕作放棄田等の不耕作水田を必要に応じて復田できる形で維持管理するのが適切であることが明らかにされている.不耕作水田を廉価に維持管理するには, 毎年の除草・維持管理が必要だが, その方法の具体的内容については十分な検討はない.そこで, 本研究では, 不耕作水田の効果的な維持管理方式の提案を目的として休耕田の管理実態調査を行った.結果, 休耕田の管理に於いては夏期休閑耕が行われておらず除草が除草剤に依存している実態を明らかにした, また, 復田を前提とする場合には湛水管理が省力的で除草剤節減的であること, 除草剤使用を減少させるには夏期休閑耕の普及が1つの解決になることを指摘し, 普及の条件について提案した.
  • 原田 昌佳, 福田 真弓, 齋 幸治, 吉田 勲, 平松 和昭, 森 牧人
    2006 年2006 巻246 号 p. 947-957
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    Local Approximation (LA) 法により, 富栄養湖におけるDOの短期予測を行った.これは, リアルタイムに得られるDO時系列のみからその短期予測を行うものであるが, 時系列にノイズが含まれると予測精度は低下する.そこで, wavelet解析によるノイズ処理を導入し, 予測精度と予測期間の向上を図った.その結果, 高周波数成分のソフト閾値処理によって予測精度は向上したが, 予測期間の向上までには至らなかった.つぎに, ノイズ処理後の時系列を低・高周波数成分に分解し, それぞれにLA法を適用することによって元の時系列の予測値を得る方法を提案した.その結果, 予測精度と予測期間は大幅に向上した.とくに, 夏季の底層DOの予測期間は6時間まで可能となり, 実用的な予測手法として有効性が高いと考えられた.
  • 粗石付き斜路式魚道の数値モデリングに向けて
    藤原 正幸, Subas CHHATKULI
    2006 年2006 巻246 号 p. 959-967
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本論文では水没する複数の障害物が連続する場の流れについて, 障害物の間隔が流れに及ぼす影響を粗石付き斜路式魚道への応用の観点から検討した.計算格子として四分木格子を用い, 水平二次元浅水流方程式を基礎式とするゴドゥノフタイプの数値モデルを半球状の障害物を超える流れに対して適用した.計算結果から, 障害物の間隔を狭くすることにより魚道を上る魚にとって好ましい流れ場を造ることは出来るが, それには限界があることがわかった.また, 障害物の間隔が小さくなるにつれ, 流速の低減率も小さくなることが明らかとなった.
  • 中村 真人, 森 淳, 柚山 義人
    2006 年2006 巻246 号 p. 969-975
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農業集落排水汚泥モミガラコンポスト (以下, SHコンポスト) の肥効特性と施用後の動態解明を行うために, SHコンポストの施用量を段階的に変え, コマツナの栽培試験を行った.その結果, SHコンポストの肥効率は58%で, 鶏ふん堆肥と同等の速効性コンポストであることがわかったが, SHコンポストの施用量が多くなるにつれて, 作物に吸収される窒素の割合は低くなった.また, コマツナ地上部のδ15N値を測定したところ, SHコンポストの施用量が多くなるほどδ15N値が大きくなった.コマツナのδ15N値を大きくする反応として, 土壌中の硝化反応, 硝酸や亜硝酸の窒素ガス化, アンモニア揮散があるが, 施用量増加により作物の窒素吸収率が低下したことから硝化が主要因である可能性は低く, 施用量が増加するほどN2OやNH3として大気に放出される割合が高まったことが要因であると判断された.
  • 食の安全・安心とトレーサビリティ情報の利用に関する研究
    加藤 幸, 片山 寿伸
    2006 年2006 巻246 号 p. 977-982
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    食の安全・安心に対する関心の高まりを受け, 農産物のトレーサビリティが注目されている. ITを活用した情報の閲覧サービスが拡大している一方, このような情報が効果的に利用され0・ない面がある. この原因として, 情報の内容, 情報提供方法情報を提供する目的に曖昧な部分があることが関連している. そこで本研究では, これらの問題点を改善し食の安全・安心の確保をはかるため, 青森県の主要農産物であるリンゴの生産現場を題材に, トレーサビリティ情報の映像化と双方向のトレーサビリティ実現による食の安全・安心の確保を目的とした実証実験を行った.また, 映像記録が生産者, 消費者に及ぼす効果と問題点の検証を行った. その結果以下の点が明らかとなった.
    1) 消費者は生産現場を映像として直感的に理解することが可能となり, 生産者および農産物に対する信頼感の構築に役立つ. 一方, 情報が誤解を生む危険性もあり, 生産者と消費者が情報を共有し意見を交わせる双方向性の高いトレーサビリティの実現が重要である。2) 生産者は顔が見える形で消費都こメッセージを伝えることが可能となる. 加えて, 映像を活用することで, 効果的な生産現場のリスク分意識改善が期待でき, 一連の活動を通じてGAPの達成につながる可能性を有している.
  • 石井 敦, 佐久間 泰一
    2006 年2006 巻246 号 p. 983-988
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    中山間地域の水田地帯は不利な耕作条件と過疎化や高齢化の進行等から担い手農家の確保が困難で, 耕作放棄が進んでいる.こうした不利な条件にもかかわらず, 圃場整備を実施して集落営農方式で専従オペレーター1名を中心とした経営規模25haの営農組合を設立し, 水田を経営・保全している地区を調査・分析した.営農組合は, 十分な所得保証による専従オペレーターの確保, 作業効率向上のための耕作地調整による地区のゾーン分けと大区画ゾーンへの組合耕作地の集団化.集落内外の非農家をも対象とした補助作業員の募集・確保等の工夫により経営を成立させていたことがわかった.ただ, 整備後も耕作上不利な条件は残るため, 今後大幅な経営規模拡大は難しく, 米価が下がった場合, 専従オペレーターの所得確保のため支援策等が必要であることを論じた.
  • 石井 敦, 佐久間 泰一
    2006 年2006 巻246 号 p. 989-995
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    耕作放棄の危機に瀕している棚田の保全のために, 全国各地で金銭的・労働的支援が行われている.本報では代表的な棚田である三重県紀和町の丸山千枚田において復田された耕作放棄田の保全活動を事例調査し, その保全に要する労働と金銭支援の具体的内容を分析した.丸山地区では町が棚田2.4haを復田し, これを地元農民からなる保存会が年間約1200人日をかけ耕作・保全管理していた.保全管理のため年間1200万円程度が必要で, その費用は公的補助金とオーナー制度, トラスト制度等の都市住民からの私的金銭支援で集められている.オーナー制度には都市住民側の需要と受け入れ側の労力制約から上限面積がある.丸山地区の棚田保全に要する労力と金銭支援は多大で, この方式で全国の棚田を保全することは難しく, 保全できるのは一部にとどまることを論じた.
  • 浪平 篤, 後藤 眞宏, 常住 直人
    2006 年2006 巻246 号 p. 997-1004
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    階段式魚道の隔壁頂部の形状は, 円弧型または傾斜型が魚類の遡上に対して望ましいといわれている.円弧型については設計のための水理特性がほぼ解明されているが, 傾斜型については円弧型より施工が容易で現地に導入されやすいにも関わらず, 水理特性は十分に解明されていない.本研究では, 隔壁頂部が傾斜型の階段式魚道における流況を把握する手段として, 計算格子の空隙率とその界面における開口率の概念を導入したデカルト座標におけるVOF法を用いた数値解析の有効性を示した.さらに, 解析結果をもとに, 魚類の遡上に対して望ましくないと考えられている表面流が, どのようなプール形状や越流水深で発生するのかを示た.
  • 松島 修市
    2006 年2006 巻246 号 p. 1005-1011
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本稿では, 今注目を集めている灌漑近代化を, その実情や背景を含めて総合的に整理する.まず灌漑近代化の大きな流れは, 水セクターが進める総合水資源管理戦略によって方向づけられていることが確認された.さらに, 水セクターが描く統制と管理を中心にした統制主導アプローチによる灌漑水需要抑制は現実性が弱く, 利水農民の内発的動機付けへの取り組みが欠かせないことを示し, その実現には農業セクターとしての関与がより重要となることを示した.また, 雑多に見える灌漑近代化内容も,(1) 灌漑利水サービスの向上,(2) 量的管理水準の向上,(3) 水質的管理水準の向上,(4) 維持管理における政府関与の撤収, のFAOの定義に近い4項目に整理できることを実施プロジェクト例の検討から示した.
  • 2006 年2006 巻246 号 p. e1
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
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