農業農村工学会論文集
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斜面薄層緑化植物における成長有効水分量の検討
森谷 慈宙山本 太平田中 聡井上 光弘
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2007 年 2007 巻 252 号 p. 671-678,a2

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抄録

本研究では真夏のガラス室条件下における薄層斜面区にセダム (常緑キリンソウ) を定植させて, 灌概実験を行い, 常緑キリンソウの成長阻害水分点, 成長有効水分量などについて検討を行った.その結果, 以下のことが分かった.(1) 常緑キリンソウにおける蒸発散比は, 土壌水分ポテンシャルがpF4.2以上を示しても灌水直後, 前の灌概サイクルにおける最大値と同様の値を示した.(2) 蒸発散比の積算値は, 経過時間の平方根との間に2次曲線で近似することができた.(3) 土壌のpF値増加に伴う蒸発散比における推移の傾向には3つの領域が見られた.第1領域における蒸発散比はLAIの大きさに影響され, 第2領域では蒸発散比の急激な減少が見られ, 第3領域では蒸発散比が0.1以下と少なかったが, 枯死した常緑キリンソウはなかった.(4) 土壌水分ポテンシャルがpF4.2以上を有し, その期間を水ストレス状態と定めた場合, この期間の増加と常緑キリンソウにおける乾物重量及びLAIとの間に高い負の相関が得られた.常緑キリンソウの灌概計画において, 成長阻害水分点がpF4.2まで広がる可能性が提案された.この結果, 常緑キリンソウにおける成長有効水分量の増加, ひいては, 有効雨量の増加及び補給灌概水量の節約が期待できた.

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