農業農村工学会論文集
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内蒙古, 河套灌区の用排水の陽イオン組成変化と除塩用水量の評価
赤江 剛夫中尾 千晶史 海濱張 義強
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2008 年 2008 巻 253 号 p. 27-33,a1

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抄録
河套灌区全域の塩分収支計算によると灌区は毎年170万トンの全溶解性塩を蓄積している. 一方, 灌概技術者や農家は近年, 灌区の塩類化は改善されていると認識している. 加えて, ランドサット画像の解析結果は, 近年塩害地の面積が縮小していることを示している. 本研究の第一の目的は, 用水路水, 地下水, 排水路水および土壌を系統的に採水し, その陽イオン組成の分析を通じて, この謎を解明することである. 土壌については水溶性陽イオンと交換態を含む非溶解性陽イオンの両方を分析した. その結果, 灌概水中のカルシウムは土壌中に沈殿するため, 土壌表層に集積し, 排水路に排水されるのはもっぱらNaイオンであることを確認した. 第2の目的はナトリウム収支に基づく除塩用水量, LRNaを新たに提案し, 灌区全域に適用してブロック別除塩用水量と塩類化リスクを評価することである. 2005年のLRNaは0.12と見積もられ, この値は同年の排水量割合0.11とほぼ一致した. このことは, 灌区全体において現状でナトリウム収支が達成されていることを示すとともに, 新しい除塩用水量, LRNa;が既存の除塩用水量よりも実際の塩類化をよく表すことを示している. 加えて, NaイオBン収支に基づいて, 支線排水路ブロックごとの塩類化リスクを評価したところ, 灌区中部でリスクが高いことが分かった.
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© 社団法人 農業農村工学会
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