抄録
洗剤の主成分として用いられ, 多量に環境中へ放出されるアニオン界面活性剤は, 有機物で汚染された土壌の洗浄剤としても利用が検討される反面, 細胞膜を破壊する作用があるため, 環境汚染物質としても注視されている. しかし, 土壌中におけるその挙動は解明されていない. ここでは, 腐植物質を多量に含む黒ボク土中における直鎖状アニオン界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウム (SDS) の吸着移動現象を明らかにするため, 溶質移動実験と吸着実験を行った. それらの結果は, 単純なイオンの吸着移動とは異なる特徴的な現象を示し, SDSが黒ボク土の腐植成分に協同吸着することを示唆した. 臨界ミセル濃度以下において, SDSの流出濃度曲線の濃度と透水係数の低下がほぼー致し, SDS吸着が透水性低下に影響することがわかった.