農業農村工学会論文集
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2008 巻, 258 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 安瀬地 一作, 木ノ瀬 紘一, 島田 正志, 田中 忠次
    2008 年 2008 巻 258 号 p. 479-484,a1
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    多自然型水路などで見られる側岸部に繁茂した植生群が洪水などで水没した場合の, 一次元解析モデルを構築した. 水没した植生群の影響をManning粗度係数として表すことで三次元的な流れを二次元流と見なし, その上で各領域におけるエネルギーのつりあい式を考えることで, 各領域平均流速の関数として断面平均エネルギー損失をモデル化した. 各領域平均流速は等流条件下の流速比と連続条件により算出した. 一次元水面形計算にはエネルギー保存則による逐次水面追跡法を用い, エネルギー損失に新たなモデルを組み込んだ. 得られた解析結果を水理実験および従来のモデルとの比較検討を行った結果, 従来のモデルに比べて精度よく実測値を再現できることを確認した.
  • 石黒 宗秀, 鳥越 崇宏, 亀岡 喜史, 赤江 剛夫
    2008 年 2008 巻 258 号 p. 485-491,a1
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    洗剤の主成分として用いられ, 多量に環境中へ放出されるアニオン界面活性剤は, 有機物で汚染された土壌の洗浄剤としても利用が検討される反面, 細胞膜を破壊する作用があるため, 環境汚染物質としても注視されている. しかし, 土壌中におけるその挙動は解明されていない. ここでは, 腐植物質を多量に含む黒ボク土中における直鎖状アニオン界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウム (SDS) の吸着移動現象を明らかにするため, 溶質移動実験と吸着実験を行った. それらの結果は, 単純なイオンの吸着移動とは異なる特徴的な現象を示し, SDSが黒ボク土の腐植成分に協同吸着することを示唆した. 臨界ミセル濃度以下において, SDSの流出濃度曲線の濃度と透水係数の低下がほぼー致し, SDS吸着が透水性低下に影響することがわかった.
  • 地盤工学的な問題に基づく検証
    小林 範之, 吉武 美孝, 武田 圭介, 前川 恵子
    2008 年 2008 巻 258 号 p. 493-499,a1
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ニューラルネットワーク (ANN) における学習法の最も代表的な手法は誤差逆伝播法であるが, 学習データ毎に算出される教師信号と出力層からの出力信号の差である誤差関数を逐次最小化するため, 極値付近での学習の非効率化や振動といった問題が発生することがある. 本研究では, すべての学習データに対する誤差関数を一括して最小化することを目的に, 拡張ベイズ法によるANNの一括学習アルゴリズムを提案した. また, 学習および一般化能力に大きく影響する中間層ユニット数Lmを決定するため, 赤池ベイズ情報量基準ABICを用いた拡張ベイズ法の調整パラメータλ2Lmの同時最適化手法を提案した. 提案手法は, 学習効率, 学習および予測精度が向上し, λ2およびLmの決定についても有効であることがわかった.
  • 中矢 哲郎, 渡嘉敷 勝, 森 充広, 森 丈久
    2008 年 2008 巻 258 号 p. 501-506,a1
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    摩耗により骨材の露出したコンクリートを模擬した水路の粗度係数を水理模型実験により測定し, 表層の凹凸形状から粗度係数を推定できる表面粗さパラメータを算定した.水理模型実験の結果, 粗度係数nは0.013であり, コンクリート水路の設計基準値以内となった.模擬摩耗コンクリートの表層形状を, 凹凸の高さ分布の偏りを示すスキューネスにより特徴付けた. マニングの粗度係数と表面粗さを関係づけるための摩耗を模擬したコンクリート水路の相当粗度島は, 算術平均粗さRaが0.5mm (±0.12mm), 凹凸の最大高さRzが4mm (±1.43mm) の範囲においては, ks=2×Rz, 又はks=0.26×Rzで表せることを示した.
  • 藤森 新作, 原口 暢朗, 塩野 隆弘, 若杉 晃介, 中 達雄
    2008 年 2008 巻 258 号 p. 507-514,a1
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    沖縄県で顕在化している赤土流出問題への対策として, 農地から流出し流末の沈砂池で堆積管理されている赤土の再流出を防止するための, 堆積土の循環再利用技術の開発が必要である. 本報では, 沖縄本島に設置した試験地を対象に, 循環再利用の前提となる沈砂池の強制排水方法ならびに堆積土の乾燥条件について, 現地試験および計算により検討した. 沈砂池内の暗渠を経由した排水試験では, 地区外へ高濃度の濁水を流出することなく排水が可能であった. また, 再利用を考慮すると, 日蒸発量が3~7mmのときの排水後の堆積深10cmまでの層の乾燥期間は, 2.5~6日と試算された. さらに, 堆積土の排水・乾燥時期は, 試算結果, 本地区での気象条件および作業環境等を考慮すれば, 10~ll月の期間内が好適と考えられた.
  • 田中 聡, 山本 太平, 森谷 慈宙, 井上 光弘
    2008 年 2008 巻 258 号 p. 515-522,a1
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では人工気象室内で, 生育に適正な温度および高温条件下におけるセダム (常緑キリンソウ) の蒸散量を測定し, 植物体内水分量を含めた新しい有効水分量について検討を行った. その結果, 以下のことが明らかとなった.(1) 蒸散比は, 適正温度では高温条件下よりも高く, 両温度条件下でも暗期における蒸散活動が認められた.(2) 積算日蒸散比と時間との関係は, 2次および対数関数で近似することができた.(3) 土壌中の水分はpF4.2以上でも蒸散活動があり, 葉内水分が寄与されるものと考えられた.(4) 植物体内水分を考慮した総有効水分量は, 従来の成長有効水分量よりも1.5~2.4倍多く, 有効雨量の増加および補給灌漑水量の節約が可能となった.
  • 岡澤 宏, 豊田 裕道, 島田 沢彦, 鈴木 伸治, 竹内 康
    2008 年 2008 巻 258 号 p. 523-528,a2
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    北海道網走川水系に位置する18の農林地流域河川において秋季に水質調査を行い, 土地利用が河川水質に及ぼす影響を検討した. 本地域では河川のNO3-N濃度と畑草地率との問に強い関係がみられた. 河川のNO3-N濃度と畑草地率との関係から得られるインパクトファクターは, 畑草地における余剰窒素に関係することが知られている. よって網走川流域の硝酸態窒素による河川汚濁は, 畑草地における余剰窒素による影響が強いと推察した. また, 網走川支流河川, 網走川本流, 網走湖のN/P比を比較することで, 網走湖への流入河川が網走湖の富栄養化に与える影響を検討した. 畑草地率とN/P比との間には高い相関関係がみられた. また, 畑草地率が30%以上を有する支流域では, N/P比が網走川本川と網走湖のN/P比よりも高い値を示した. このことから, 畑草地率が30%以上を示す支流域河川の水質は, 他の支流域河川よりも網走湖の水質に大きな影響を及ぼしていると推察される.
  • 三春 浩一, 田中 良和, 向井 章恵, 樽屋 啓之, 中 達雄
    2008 年 2008 巻 258 号 p. 529-534,a2
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    用水路の機能保全を図るため, 従来の構造機能に加えて水理および水利用に対する総合的な機能診断と性能設計を実施し, 機能保全対策を策定することが必要不可欠である. 本報では, 水田かんがい地区の用水路を対象に, 水路内で大発生した藻類繁茂による通水性低下の課題をとりあげた. 不等流計算を用いた水理性能照査法により, 藻類の大量繁茂時における水路側壁からの溢水区間を推定した. 溢水対策のシナリオを5案作成し, 維持管理を考慮したライフサイクルコストの算定から最適案を選定した.
  • 高田 雅之, 井上 京, 谷 宏
    2008 年 2008 巻 258 号 p. 535-541,a2
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    Lバンドの合成開ロレーダであるALOS/PALSARデータの泥炭地湿原への適用について検討した. 対象地は自然再生が取り組まれている北海道サロベツ湿原で, 2006~2007年の春から秋に取得された10シーンを使用して, 後方散乱係数と土壌, 水文, 植生, 地形の各因子との関係を解析した. 単回帰分析の結果, 表層土壌の乾燥密度, 窒素含有率, C/N比, 並びに植生高, NDVI, 傾斜と有意な関係が示され, 泥炭地特有と思われる散乱特性及び入射角特性を明らかにした. また重回帰分析の結果, 表層土壌の乾燥密度が最も寄与していることが明らかとなり, 泥炭地湿原においてLバンド合成開ロレーダから表層土壌特性の空間分布を推定する有意な重回帰モデルを構築することができた.
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