情報知識学会誌
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論文
木版刷チベット文献の文字自動認識の試み
小島 正美川添 良幸木村 正行
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1991 年 2 巻 1 号 p. 49-62

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抄録

 コンピュータによる文字自動認識の技術は,日本語や英語などの活字文献に対しては,今日実用段階までに発展している.しかし,手書き文献認識は非常に難しく,特に今回認識対象に取り上げた木版刷りチベット文献の自動認識の研究は世界的に見てもまだなされていない.これらの文献を自動認識することができれば,インド原典,チベット訳文献,漢訳文献などの調査研究する学者が,従来古文書の読み取りに当てていた時間の大半を機械化することが可能で,その結果本来なすべき文献学に専念できる点においても大変意義がある.
 本研究で採りあげた木版刷りチベット文献の文字は,文字認識の分類上では手書き文字に属すると共に,文字の行間隔が狭く文字が複雑に重なり合っている点が特徴である.そこで,従来の縦方向射影では切り出せない文字に対する処理として,チベット文字特有の横棒(MHL:Main Horizontal Line)に注目した文字切り出し法を用い,また認識には重ね合わせ法と構造解析法を組み合わせた新しい方法を採用した結果,初期的試みとしては十分な認識率を達成することができた.

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