2012 年 22 巻 4 号 p. 328-335
本稿では、最近、歴史学、政治学、社会学の分野において活用されるようになったオーラル・ヒストリーとはなにかについて説明するとともに、筆者がこれまでに実施してきた機械工業振興臨時措置法のオーラル・ヒストリー、トヨタ技術者のオーラル・ヒストリー及びラオス企業家のオーラル・ヒストリーを紹介した。その上でオーラル・ヒストリーの実践のためには、インタビューの対象となる事象の起こった時点とインタビューをする時点の時間的距離、インタビューをする側と語り手の心理的距離について考慮することが重要であると指摘した。さらにオーラル・ヒストリーの手法を震災の記憶・記録に活用する場合の留意点について考察を行った。