情報知識学会誌
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『うつほ物語』の語彙に関する計量的な検討 -「楼の上上」及び「楼の上下」の語の出現傾向について-
土山 玄
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2017 年 27 巻 1 号 p. 6-22

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抄録

 平安時代に成立した『うつほ物語』は現存最古の長編物語であり,日本文学史上において重要な文学作品である.しかし,『うつほ物語』の作者は不詳であり,成立過程も明らかではなく,これらの問題は量的なアプローチによって貢献しうる余地はあると考えられる.そこで,本研究では計量的な観点から,各巻における語の出現率などについて統計的な分析を行い,『うつほ物語』の量的な特徴に検討を加えた.分析の結果,『うつほ物語』の最終2 巻である「楼の上上」と「楼の上下」は他の諸巻に比べ形容詞及び形容動詞の比率が高く,また「楼の上上」及び「楼の上下」と他の諸巻との間において,名詞・動詞・形容詞・形容動詞の語の出現傾向に相違が認められた.特に,「楼の上上・下」の 2 巻は形容詞や形容動詞の複合語が特徴的に多用されていることが明らかになった.それゆえ,本研究の分析から「楼の上上・下」の2 巻は他の諸巻とは異なる量的特徴を有していると言える.

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