2024 年 34 巻 3 号 p. 256-270
従来の物語分析は特定のジャンルを対象としたもので,ジャンル間の差違などを計量的に明らかにする研究はなされてこなかった.本研究では,ジャンル横断的な物語構造分析を実現するため,現代日本のエンターテイメント作品で頻出の5ジャンル(冒険,戦闘,恋愛,探偵,怪談)を対象として各ジャンル合計1500話以上を収集した.また全ジャンルを共通の枠組みで構造分析し比較可能なデータセットを構築した.各ジャンルのデータセットに基づき,因子分析により物語展開の共通・固有の因子を特定した.またサブジャンルの構造的特徴もクラスター分析によって抽出された.各ジャンルの特徴が同じ基準で比較可能となったことで,今後ジャンル複合的な物語の分析や自動生成の実現にも道が開かれると期待される.