Reproductive Immunology and Biology
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学会賞受賞論文
精巣内インターロイキン-35の役割
寺山 隼人善本 隆之内藤 宗和平井 宗一曲 寧畑山 直之林 省吾金沢 輝久隅山 香織坂部 貢伊藤 正裕
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キーワード: 精巣, Interleukin-35
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2014 年 29 巻 p. 13-23

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抄録
Haploid germ cells (=精子細胞・精子)は,様々な自己抗原を含んでおり,セルトリ細胞間の結合で構成される血液-精巣関門(blood-testis barrier)によって免疫系から護られている。また,セルトリ細胞,ライディッヒ細胞および精巣マクロファージの一部が免疫を抑制する働きを担っていることが知られている。さらに,精巣内で分泌されるいくつかのサイトカインが免疫抑制作用を有することが明らかになってきた。最近,新たに同定されたサイトカインであるInterleukin (IL)-35が,免疫抑制効果を有し,Epstein-Barr virus-Induced gene-3 (EBI3)とIL-12p35(p35)のヘテロダイマーとして存在することが報告された。しかしながら,精巣においてIL-35がどのような役割を担っているのか未だ明らかになっていない。本研究では,正常マウス(12週齢雄C57BL/6マウス)を用いて精巣内のEBI3およびp35の発現を調べると共に,EBI3およびp35を欠損させたノックアウトマウス(KO)の精巣を解析した。その結果,正常マウスの精巣内のEBI3は,CD163陽性細胞の一部(精巣内在住マクロファージ)および精子細胞・精子の頭部に発現していた。p35は,EBI3陽性およびF4/80陽性細胞の一部,精細管の基底膜,血管内皮細胞および精子細胞・精子の頭部に発現していた。EBI3およびp35 を欠損させたKOマウスの精巣では,有意な精子形成障害が見られた。また,精巣間質中にはCD4,CD8,B220陽性細胞が浸潤するとともに,精巣内でIFN-γやIL-10の上昇がみられた。さらに,血清中に精子細胞・精子に対する自己抗体が認められた。本研究の結果はIL-35を構成しているEBI3およびp35はCD163陽性細胞の一部に発現し,精巣において免疫抑制の維持に関わっている可能性を示唆している。
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© 2014 日本生殖免疫学会
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