Reproductive Immunology and Biology
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最新号
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総説
  • 米田 哲
    2020 年 35 巻 p. 1-8
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/01
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    早産は、自然早産と人工早産に分けられるが、およそ7割が自然早産とされている。また、この自然早産の既往歴自体が次回妊娠時の自然早産のリスクであるとされ、近年、その繰り返す確率は、22.3%であると報告されている。このような自然早産の原因は多岐に渡るが、子宮内の炎症(≒組織学的絨毛膜羊膜炎)がその中心である。よって、切迫早産と診断された際、性器出血、子宮口開大などの臨床症状から治療が行われるが、同時に直接評価が難しい子宮内環境(炎症と感染)がその予後に重要であると言える。特に、超早産などの早期の自然早産例では、羊水中の細菌とUreaplasma/Mycoplasmaの重複感染が関与していることがわかってきた。このような病態を考慮し、抗菌薬の選択、黄体ホルモンを投与により、妊娠期間延長効果があることがわかったものの、すでに高度の炎症が存在するケースでは治療に難渋しやすく、治療限界があるとも言える。よって、妊娠中は子宮内環境が破綻しないような対策が必要である。妊娠維持に必須の制御性T細胞は、腸内Clostridium属と相関があることがマウスによる動物実験からわかってきた。また、腸内のClostridium属が少ない切迫早産患者は、早産しやすいことも分かっている。妊娠判明後、Clostridium属を含むプロバイオティクス療法が、自然早産を予防できる可能性があるのではなかろうか。

  • 田口 歩, 川名 敬
    2020 年 35 巻 p. 9-15
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/01
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    子宮頸癌や子宮頸部異形成(CIN)はHPV感染が原因となる。HPV予防ワクチンの普及とともに子宮頸癌が減少することが期待されているが、根絶までには時間を要する。子宮頸癌排除のための段階的戦略として、HPV予防ワクチン接種による1次予防、検診による早期発見やCIN管理による2次予防、子宮頸癌発症後の治療介入における3次予防に分けられる。本稿では、特に2次予防段階におけるHPVジェノタイプに基づいたCIN管理方法について概説するとともに、HPVに対するヒト免疫応答についても概説する。

学会賞受賞論文
  • 森田 恵子, 小野 洋輔, 津田 さやか, 中島 彰俊, 齋藤 滋
    2020 年 35 巻 p. 16-23
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/01
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    Recurrent pregnancy loss (RPL) is one of the major concerns in Japan. We performed a long-term multicenter prospective study to reveal the risk factors and pregnancy outcomes of RPL in Japan. Antiphospholipid antibodies (aPL), malformation of the uterus, thyroid dysfunction, parental karyotype abnormality, factor XII deficiency, and protein S deficiency were defined as the risk factors of RPL. The prevalence of each risk factor was similar to previous studies except aPL positive rate. No risk factors were detected in more than half of RPL patients (65.2%). In transiently aPL-positive patients, the live birth rates with LDA were comparable to that with heparin + LDA. Despite that factor XII deficiency and protein S deficiency are not recognized as risk factors for RPL in general, low-dose aspirin (LDA) or unfractionated heparin + LDA therapy improved live birth rates. However, the live birth rate treated with LDA and that with unfractionated heparin + LDA were comparable in factor XII deficiency and protein S deficiency. Factor XII deficiency and protein S deficiency might be considered to be the risk factors of RPL and LDA therapy might be recommended in Factor XII deficiency, protein S deficiency, and transiently aPL-positive patients. We have discussed the risk factors and the live birth rate after treatment between Japan and worldwide.

  • Sayama Seisuke, Song Anren, Brown Benjamin C., Couturier Jacob, Iriyam ...
    2020 年 35 巻 p. 24-31
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/01
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    【目的】低酸素と胎盤形成不全の関連は知られているが、低酸素において中心的な役割を担う赤血球の機能低下と胎盤形成不全との関連に関する知見は極めて少ない。本研究では、赤血球の膜上に存在する核酸トランスポーターであるEquilibrative nucleoside transporter 1(ENT1)をノックアウトしたモデルマウスを用いて、母獣赤血球の酸素運搬能が低下した際に認める表現型を検証し、その分子学的背景も検討した。

    【方法】施設内研究倫理委員会承認の下、上記モデルマウスの赤血球酸素運搬能が低下していることを確認すると同時に、妊娠における表現型が胎児発育不全であることを確認し、メタボロミクス解析を用いて、母獣からの胎盤へのアミノ酸取り込みが低下しているを同定した。胎盤局所でのHypoxia inducible factor 1-α(HIF-1α)の発現を免疫染色法で検討し、realtime RT-PCR及びウエスタンブロット法により、胎盤でのアミノ酸トランスポーターの発現を検討した。最後に絨毛細胞セルライン、HTR-8/SVneoをHIF-1α安定剤であるDimethyloxaloylglycine(DMOG)と共培養することで、HIF-1αとアミノ酸トランスポーター発現の関連についても検証した。

    【成績】赤血球酸素運搬能が低下した遺伝子改変マウスでは、胎盤局所でのHIF-1αの発現の上昇を認め、胎盤でのLarge neutral amino acid transporter1(LAT1)の発現が低下していた。また、HTR-8/SVneo細胞培養においてHIF-1α発現下ではLAT1のmRNA低下を認めた。

    【結論】母獣の赤血球酸素運搬能が低下することで胎盤局所でのHIF-1α発現が亢進し、胎盤でのLAT1の発現が低下することで母体循環中の血清からのアミノ酸の取り込みが低下し、胎児発育不全の表現型を呈し得ることが示唆された。

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