抄録
地震リスクには,他のリスクと比較してさまざまな特性があり,そのために保険困難な要素が多い。これを克服するために,空間的リスクに加えて,時間的リスクを大幅に取り込むことで,リスク分散を実現しようとする。しかしこれは,保険原理の観点からは,重大な問題を含んでいる。そこで,本稿では,非常に特異な性質を有する地震保険について,保険原理に照らしながら,構造的特徴ならびに限界について考察しながら,官民役割分担のあり方について論じる。とりわけ,地震保険に見られる逆選択現象の本質を捉えつつ,その対処策として採用されている地域別料率について,過度の採用は水平的不公平を増大させる恐れがあることから,むしろ,耐震構造に対するウェイトを高めた料率設定を行うことが,契約者間の公平性に照らして望ましいことを主張する。