抄録
本稿では,保険理論の立場から新しい保険法を検討した。第2節では,制度目的の観点から,保険契約法と保険監督法の相違を明らかにした。前者は保険契約者の私的情報による機会主義的行動を防止することによって保険契約を維持することが目的であり,後者は保険者の持つ保険情報を保険契約者が用意に取得できないことから生じる保険者の機会主義的行動を防止することによって健全な保険制度を維持することが目的であるとした。第3節では,「契約前発病免責」「未成年を被保険者とする保険」,「危険の変動」「被保険者による解除請求」を取り上げて保険理論から検討した。最後に,本稿の検討から到達した二つの認識を明らかにして結語とした。その認識とは,保険法と保険理論の前提とする契約世界の相違について,および保険法における契約者保護の意味についてである。