抄録
現在の日本保険市場に90年代の自由化がもたらした影響は大きい。自由化の過程での混乱から,保険金の支払い漏れ等の問題が生じたが,業界全体で信頼回復に向けた取り組みを進めている。国内損保事業では収益性の向上を急ぐ傍らで,健全な競争環境を築いて行くことが最重要課題である。保険の本来的特性は,時間的・地理的なリスク分散であり,当社ではこの考えから海外保険事業の拡大に取り組んでいる。現在,国際的なレベルで保険会社の健全性を評価する枠組み作りが進められているが,保険会社におけるリスク管理を促すとともに,リスクの定量的な把握を促す潮流となっており,これを受け当社としても「リスクベース経営(ERM)」を進めている。保険契約者の保護に万全を期し,経営の透明性を高めつつ保険業界の競争力を向上させ,健全で規律ある市場を維持する上では,このERMの考え方を,早く業界全体に普及させる必要があると考える。